「グローバルワーク」「ニコアンド」「ローリーズファーム」などを展開するSPAアパレル企業アダストリアは公式WEBストア [.st] (ドットエスティ)に、画像検索機能を追加したことを発表した。ユーザは任意のコーディネート画像を[.st]にアップロードすると、[.st]内のアイテムからアップロードした写真のアイテムと類似のアイテムが検索・購入できる。この画像検索機能は人工知能を用いた画像解析システム「#CBK scnnr(カブキスキャナー)」を開発するファッションテックのスタートアップ、ニューロープ社と共同開発。アダストリア・イノベーションラボ(以下「ラボ」)の高橋氏と田中氏、ニューロープ酒井氏に話を伺った。
1.7万アイテムから任意の画像と類似アイテムがみつかる
ユーザはまず[.st]の画像検索のLP(スマホサイトのみ)にアクセス。自分で撮影したコーディネート写真をサイトにアップロードする(全身の写真が好ましい)。瞬時に画像解析が行われ、「バッグ」「トップス」「ボトムス」「シューズ」といったアイテムごとに[.st]のECから類似アイテムが確認できる。会員登録を経てそのままECで購入することも可能だ。
商品画像検索のイメージ(pilot boat作成)
アイテムは[.st]内のマスタと連携しており、実際にある約1.7万アイテムの在庫から紹介される仕組みとなっている。
アイテムを探す煩わしさから解放
インスタグラムや雑誌をみていて「この商品が欲しい」と思っても、その商品自体はすごく高価なものだったり、珍しいアイテムだったりすると購入することは難しい。かといって既存のECの仕組みで類似アイテムを検索したり、似たアイテムを探してリアル店舗を歩き回ることは大変だ。そんなときにこの画像検索システムが登場する。ユーザは雑誌やマネキンなどを撮影したりスマホの画面キャプチャをとって[.st]にアクセスすれば、類似のアイテムがみつかるのだ。アダストリアのもつブランドはラインナップが広いので、金額やテイストなどは自身に合わせたチョイスが可能なのも魅力だろう。
ユーザに提供したい価値はまず「アイテムを探す煩わしさからの解放」です。昨今はインスタグラムなどのSNSの躍進で、瞬間的な購買が増えています。なのでブランドとしても欲しいものをすぐに見つけられる仕組みが必要でした。[.st]の検索システムを使っていただければ簡単にお手頃価格の洋服を見つけることができます。
もうひとつは「AIを介すことによる洋服との偶然の出会い」。類似アイテムを検索することによって、自分が検索する過程ではたどり着かなかった洋服に出会うことができます。(ラボ高橋氏)
アダストリアとしてはユーザに商品を検索してもらうことが[.st]の認知度アップにつながるし、目的のアイテムに近い商品が登場するとなれば、他のECよりもコンバージョンアップが期待できるだろう。
ラボのオープンイノベーション施策から協業を開始
アダストリアは2017年、スタートアップのテクノロジーとアダストリアのリソースの組み合わせ、いわゆるオープンイノベーションを目的として「アダストリア・イノベーションラボ」を設立。高橋氏によればその役割は大きく以下の2つだ。
① 既存事業とのシナジー
外部のスタートアップと社内をつなぐことと、サービスアウトするまでのディレクション
② 新規事業モデルの創出
これまでの既存事業では取り組み難かったビジネスモデルを社内外のリソースを活用しスピード感を持って開発する
またラボは昨年スタートアップ数社が、役員陣を中心としたアダストリアの社員をオーディエンスとするピッチを開催。スタートアップは自社サービスの紹介と、アダストリアの協業案を提案した。この社内ピッチに参加したスタートアップの1社がニューロープで、これがきっかけとなって本件の画像検索システムを開発するに至っている。
(情報開示:pilot boatはこの社内ピッチ大会の開催等に関わっている)
アダストリアはお客様起点を一番大事にしている会社。テクノロジードリブンなわけではなく、実際にお客様にサービスに触れていただき、われわれがサービスを進化させていく事が重要だと考えています。
ラボをきっかけに、アダストリアとスタートアップの接点を増やしていて、ニューロープのAIのような新しいテクノロジーも導入しようとしています。今後も色々な施策を仕込んでいきますので、これをパラダイムシフトのきっかけにしていきたいですね。(ラボ高橋氏)
画像検索システムはサービスインしたものの、ニューロープとアダストリアの協業はこれで終わりではない。ファッションはトレンドがあるため常に教師データを更新していく必要があるし、ユーザの行動を解析しながらマッチング精度を上げていく必要もある。
今後追加で考えうる施策としては、たとえば着合わせ(コーディネート)提案が考えられます。モデルやインスタグラマーがどのようなアイテムを組み合わせて着用しているかを認識し、ユーザが画像検索をしたときにアイテム単品だけでなく、コーディネートもあわせて提案するというものです。トレンド予測などにも取り組んでいきたいですね。(ニューロープ酒井氏)
ラボは今後もファッションテックを中心としたデジタル施策や、イノベーションに取り組んでいくでいくという。すでに数件を仕込んでいる最中とのことだ。
(提供:アダストリア)
スタートアップ情報
代表者:代表取締役CEO 酒井 聡
所在地:東京
設立日:2014年01月
URL :http://www.newrope.biz/
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ぺーたろー
合同会社pilot boat 代表社員CEO / ライター
1987年生まれ。2009年明治大学経営学部卒、2011年早稲田大学大学院会計研究科修了。在学中公認会計士試験合格。大手監査法人で会計監査に携わった後、ベンチャー支援会社に参画し、300超のピッチ・ベンチャーイベントをプロデュース。
2017年に独立して合同会社pilot boatを設立し、引き続きベンチャー支援に従事。長文スタートアップ紹介メディア「pilot boat」、スタートアップ界隈初心者のためのオンラインサロン「pilot boat salon」、toCベンチャープレゼンイベント「sprout」を運営。得意分野はFashionTechをはじめとするライフスタイル・カルチャー系toCサービス。各種メディアでスタートアップやイノベーション関連のライターも務める。
Twitter: @jumpei_notomi