BtoBのファッションフリマ「スマセル」が挑む、デッドストックという業界の負

大阪発スタートアップのウィファブリック。「スマセル」という名のBtoBファッションフリマサイトを手がけている。サイトをのぞいてみるとジャケット・靴・ストール・ファブリック、ありとあらゆるものが通常の流通価格よりだいぶ安く販売されている。

単に便利だから作っただけのサービスではない。ファッション業界では過剰在庫とその処分が長年の課題となっており、その課題にメスをいれようというのだ。ウィファブリック代表の福屋氏に話を伺った。

 


株式会社ウィファブリック 代表取締役社長 福屋 剛(Fukuya Tsuyoshi)

関西外国語大学在籍時、40ヶ国以上を単独で旅する。同時期にURBAN RESEARCHにてショップスタッフ、ニューヨーク留学時にアパレル関連のアシスタントバイヤーとしての経験を積んだ後、瀧定大阪に入社。同社にて約10年間、繊維製品の企画・生産・販売までを一貫して行い、これらの経験の中で、大量に企画・生産・販売し、残したものを自分自身の手で廃棄処分することに疑問を感じるようになる。商社を退職し、様々な課題を抱える繊維ファッション業界の現状を変えるため2015年3月に起業する。

 

繊維・ファッション業界のフリマサイト「スマセル」

小売りは機会損失を防ぎたいから在庫をもつ。工場は機械を止められないから在庫が増える。だから間に入っている商社も当然在庫をもつ。

みんな余計に在庫があるからデッドストックが増える。商流の川上から川下まで、ありとあらゆるところで大量の在庫があり、その大半が廃棄される。日本では年間170万トンの在庫が廃棄されているそうだ。それがファッション業界の現状。

こんな状況を解決しようとしているサービスが、株式会社ウィファブリックが提供する「SMASELL(スマセル)」だ。

スマセルは「繊維・ファッション業界のフリマサイト」だ。フリマとはいっても利用するのは企業・法人で、在庫(デッドストック)を売買することが可能だ。

 

企業のデッドストックを適正に処分する

繊維・ファッションとのことで、スマセルのカテゴリーは以下に分かれている。

1 アパレル・ファッション製品
2 インテリア・ライフスタイル製品
3 テキスタイル・付属類(ボタンやファスナー)

BtoBサービスなので一般消費者には見れないが、サービスの中を覗いてみると、ジャケット・靴・時計・ストール・レインコートなどがズラッと並んでいる。BtoBの商材全般を扱っているのでアパレル製品だけでなく、テキスタイルやファブリックなどの加工前の商品も販売されている。CtoCとのフリマと違って1単位ではなくロットで売られることも特徴だ。

今までデッドストックは、決算前に慌ててバッタ屋と呼ばれる格安販売店に二束三文で売却したり、産廃業者にお金を払って処分してもらっていたりした。しかしデッドストックとはいえ、2年前の商品がキャリーされてきたものや、シーズンが過ぎてしまっただけで、商品としては問題のないものも多い。処分した品は、まだ使えるものだし、本当は誰かが求めているものだったかもしれないのだ。スマセルを使えば今まで販売できなかったデッドストックを販売できるようになる。

たとえばアパレルだと、今季作った商品をいかに売るのかがメインの仕事、そこが一番楽しいですよね。出品者サイドからすると在庫処分はメイン業務ではないので、後回しになりがちです。

スマセルなら従来の在庫処分より数段楽に取引できますし、金額的にも収益性が高まります。面倒なことはスマセルに任せていただき、メイン業務に集中していただきたいです。(福屋氏、以下同様)

 

スマセルはBtoBのフリマサイト

スマセルは、百貨店・GMS(総合スーパー)、ディスカウントストアといったバイヤー側にもメリットがある。まず何よりA級品が格安で仕入れられる。スマセル内では最終価格の10-20%程度で販売されていることも珍しくないそう。

また新規に新しい会社と取引する際は登録料のような手数料がかかることがあり、掛売りのための与信や前払いなどにも対応しなければならなかった。しかしこの登録には時間もコストもかかり、とくに中小企業にとっては負担が重い。

しかしスマセルは銀行の信託サービスにより与信口座を開く必要もない。これによってたとえば、セレクトショップなどは幅広いチャネルから仕入れができるようになり、ラインナップが広がるかもしれない。ちなみにスマセルのユーザは基本的に企業だが、審査を通った個人事業主も利用可能だそう。

あらゆる企業がさまざまな商品を販売しているというと、ファッションに詳しい方なら展示会を想像するかもしれないが、展示会はプロパー品で今季販売したい商品が並んでいる。他方でスマセルが扱うのは特価品だ。

 

在庫処分という業界の負を解決する

福屋氏がスマセルを開発したのは、自身の経験があったからだそうだ。

私は前職、繊維商社で10年ほど働いていました。商社ですので大量に企画して販売して、そして大量の在庫を処分してきました。やはりサプライヤーとして罪悪感があったんです。とはいえこれは自社だけの問題だけではなく、業界全体の問題でした。起業してこの問題に取り組むことに決めたのです。

 

商社を退職した福屋氏はウィファブリックを創業。最初は「RDF(アールディーエフ)」というブランドを展開していた。企業のデッドストックを格安で買取り、それをもとにアイテムを製造するエシカルなブランドだ。

業界的にも新しいコンセプトで「うちの商品も扱ってもらえないか」という問い合わせがたくさん来たそう。しかし福屋氏は葛藤していたという。

嬉しいことではあるものの、日本で余っている在庫をすべてウィファブリックで引き取るわけにはいきませんので、ほとんどの申し出をお断りするしかなかったんです。

僕らは廃棄の問題を解決しようとしているのに、こんなに断ってしまってどうするのか。デッドストック、もしくはデッドストックを素にした商品を必要としている人がたくさんいるのはわかっていたので、欲しい方にちゃんとデッドストックを仕組みで届けないといけないと感じたんです。

余った資源をどこかで適正化し、商材に価値を見出してくれる人同士をマッチングしなければいけない。試行錯誤を重ねた結果、ウィファブリックはスマセルにたどり着き、2017年07月にローンチ。インタビュー時点で全250社が登録するサービスになっている。

 

「廃棄のない循環社会」というミッションで社内外に仲間を増やす

ファッション業界の在庫問題を、フリマというプラットフォームで解決しようと試みるスマセル。どんな人材を採用しているのだろうか。

ファッション業界出身者は半数以下です。業界経験やスキルというより、ミッションへの共感を重要視しています。

 

スマセルのミッションは「廃棄のない循環型社会」。前掲のようにファッション業界ではほとんどの会社がデッドストックに頭を悩ませている。ここに共感できるかどうかがもっとも重要なのだそう。

また廃棄をなくして循環型社会を作るというミッションは、社内への採用だけでなく社外にも効果を発揮しているらしい。

スマセルのお客様にはミッションに共感してくれるから販売・購買してくれる方が大勢いるんです。デッドストックは業界の課題だと皆さん認識していますが、今まで打つ手がなかったんですね。「スマセルがそれを解決するなら喜んで」ということでユーザになっていただいているのです。

 

ちなみにウィファブリックは大阪の会社。よく優秀な人材は東京にいるのではと聞かれるそうだが「関西にも優秀な人はいっぱいいますよ!」とのこと笑。ファッションや循環型社会、大阪で働きたい方はぜひウィファブリックをチェックしてみてほしい。

 

まずは「繊維・ファッション業界のスマセル」という地位を

ここまでは都合上ファッション業界を前提に話してきたが、モノを扱う業界で廃棄のない業界はないかもしれない(ちなみに食料だと、日本は年間 5500万トンの食糧を輸入し、1800万トン廃棄しているそうだ)。つまりファッション業界に限らず在庫の問題はほとんどの業界で共通の課題で、どの業界でも頭を悩ませているのだ。

実際他業界からも、「スマセルで販売できないか」「スマセルの仕組みをこちらの業界でもできないか」という問い合わせは多いらしい。しかし福屋氏は「他業種をやる予定はない」という。

私がファッション業界出身ということもあって、まずは「繊維・ファッション業界の『スマセル』」という、確固たる立ち位置を築きます。

他の業界からもお声掛けはいただいているのですが、専門性が必要だったりブランドの統一性だったり、どちらにせよ短期的に我々が参入するのは難しいのかなと思っています。

とはいえ我々のミッションは廃棄をなくすことですから、長期的にはわかりませんけどね。

 

またデッドストックは、国内だけの問題ではない。日本企業が国外に工場をもっていてそこに在庫がある場合もあるし、海外企業も当然在庫を保有している。当然彼らにも在庫を売却するインセンティブはあるはずだ。福屋氏も「グローバルに在庫をシェアできるプラットフォームにしていきたい」と意気込んでいる。

廃棄をなくして循環型社会を作るというミッションに共感していただける方とはぜひ一緒に仕事したいです。弊社のメンバーになっていただけるのももちろん嬉しいですが、スマセルには社外の協力者も必要です。ユーザとしてでも提携先としてでも、ぜひお声かけください。

 

ファッション業界の在庫の問題は深刻で誰もが頭を悩ませてきたし、地球にだって優しくない。ウィファブリックは「廃棄のない循環型社会」を掲げBtoBのフリマでその問題を解決しようとしている。ファッション業界に身を投じてきた福屋氏は業界の裏側もわかっているし、何より自身もそのペインを体感してきた。

ウィファブリックとして業界の負を解決したい方や、ウィファブリックと一緒に業界を改革したい方は、ぜひスマセルに注目してほしい。

 

 

インタビュー内容はpodcastでも配信しています

podcastでもインタビューを配信しています。興味がわいた方は是非こちらも聞いてみて下さい。

AUTHOR
納富 隼平(Notomi Jumpei)
合同会社pilot boat CEO
1987年生まれ。2009年明治大学経営学部卒、2011年早稲田大学大学院会計研究科修了。在学中公認会計士試験合格。大手監査法人を経て、トーマツベンチャーサポート株式会社に参画し、ベンチャー支援に従事。毎週開催ピッチイベントMorning Pitchをはじめ、300超のピッチ・ベンチャーイベントをプロデュース。2017年に独立して合同会社pilot boatを設立し、引き続きベンチャー支援に従事する。現在もBtoCベンチャープレゼンイベント「sprout」、ベンチャーHow to紹介イベント「faces」を主催する。得意分野はFashionTechをはじめとするライフスタイル系BtoCサービス。「pilot boat」「pilot boat cast」を運営。

 

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