【トイサブ!】ユーザーと事業のニーズを叶える、玩具サブスク×PBの狙い

 

pilot boatで紹介したスタートアップのその後をお伝えする「シリーズSEQUEL」。今回登場するのは、知育玩具をサブスクリプションで家庭へ届ける「トイサブ!」を運営する株式会社トラーナ(以下「トラーナ」)だ。トイサブ!のサービス内容詳細については前回の記事もご覧いただきたい。

 

トラーナは2019年、2020年と資金調達を実施。トイサブ!ではプライベートブランド(以下「PB」)も開発して勢いに乗っている。今回はPBを中心に最近の動向を、代表の志田氏に伺った。

(取材:2021年05月)

株式会社トラーナ 代表取締役 志田典道(Shida Norimitsu)
東京都出身、1983年生まれ。明治大学法学部卒。四児の父。大学在学中に友人とWeb及び紙媒体のディレクション・開発制作を行う株式会社デコラボを創業。その後事業を譲渡し、複数の外資系企業でエンジニア、プロダクトマネージャや日本支社の立ち上げ経験を経て株式会社トラーナを創業。

 

スペシャリストが選ぶ、玩具のサブスク

 

トイサブ!は子供向けおもちゃのサブスクリプションレンタルサービスだ。トラーナが子供の成長に合った玩具を6点(4歳0か月以上は5点)選定し、ユーザーの元へ届ける。月額は3,674円(税込み)。選定するのはいわゆる「知育玩具」だ。

知育玩具という明確なカテゴリーがあるわけではありませんが、子供の能力や時期をきちんと考えて作られている点が知育玩具だと考えられています。ポイントは、成長と発育に関連する機能がきちんと考えられていること。古くは積み木やままごと、ボールを落とすようなおもちゃも知育玩具かもしれません。(志田氏、以下同様)

 

「子供の能力や時期」といっても、1歳と5歳では能力が全く異なる。実際にはどのくらいのスパンで知育玩具を選ぶべきなのか。志田氏によれば、成長が特に早い0歳代では、1.5~2か月程度で扱える玩具の種類は変わってくるという。例えば米国では疾病対策予防センター(CDC)が年齢別のマイルストーンを提示していたり、国内では発達段階を軸に認知構造の発達をみる太田ステージという指標がある。トイサブ!ではこれらを参考にしながら個人差等も考慮して、月齢に合わせた玩具をトイサブ!のプランニングスタッフが選定する仕組みとなっている。

 

しかも玩具は、子供毎に状況をみながらカスタマイズされている。重視しているのはユーザーからのフィードバックだ。ユーザーは交換のタイミングで、玩具の評価を実施。玩具毎に5段階評価をして、定性的なコメントも入力する。情報を見ながら「これがお気に入りだったようなので、次はこれも気にいると思います」「こういうことができるようになる年齢なので、これを送っておきます」といったように、丁寧なコミュニケーションをとるように心がけている。既に家庭にある玩具と重複しない気配りも重要だ。

お客様からは色んな連絡を頂きます。中には自宅にあるおもちゃをリスト化しておもちゃが被らないようにしてくれたり、おもちゃの写真を送ってくれる方もいます。そんなことが続くのでトイサブ!のスタッフも慣れてきて、今では写真を見るだけでおもちゃの種類がわかるみたいです(笑)。もちろんおもちゃの知識も豊富にもっているし、おもちゃ選定のスペシャリストになっていますね。

 

トイサブでは原則として6点(4歳以上は5点)の玩具を隔月毎に交換できる。返却期間が近づいてきたらユーザーは、継続か交換かを選択。例えば子供が気に入った玩具が2点あればそれは継続して借りて新たに4点を借りてもいいし、2点については買い取り新たに6点を借りてもいい。家族にとって想い出深い玩具を買い取るようなケースもあるようだ。

 

ユーザーと事業のニーズを叶えるPB開発

 

トラーナは2020年10月、トイサブ!のPB第1弾を発表した。その後もリリースを続け、取材時点ではラトル、木琴、積み木の3つの玩具を展開している。従前は市販の玩具のみを組み合わせてユーザーに発送していたが、今後はその組み合わせにPBも含まれるようになる。

 

前述のようにトイサブ!ではユーザーからのフィードバックも活かしつつ、子供毎にカスタマイズした玩具を選定している。そんな中、様々なデータが集まってきて「この子供には、こういう玩具を送りたい」と思っても、丁度いいアイテムが市場にはないこともあるだろう。そう考えると、トイサブ!のプライベートブランド開発は必然に感じる。

前回の取材時には「お客さまの声を集められるんだから、いい玩具が作れるはず」と思っていたのですが、それに加えて事業側の課題を解決できるおもちゃをPBで作りました。

 

PBは単にユーザーが欲しているものを開発しているだけでなく、事業を展開するトラーナのニーズも叶えているのだという。例えば通常の木琴(玩具)は台形だが、他方でトラーナが第2弾PBとして開発した木琴は、長方形だ。

 

売り切りの商品だったら専用のパッケージを作ることで箱に収めやすくなるだろうが、トイサブ!の場合は他の様々な種類や大きさの玩具と一緒に梱包されるため、形が扱いやすいというのは大きなメリットになるのだという。またサブスクリプションで何回も送付するうちに、音程がズレないように工夫した(ちなみに音程は木の中の空洞を調整して実現しているようだ)。親子で遊べるようにバチが2本ついていたり、誤飲を防ぐためバチの叩く部分が取れないようにも気を使う。このようにPBには、サブスクリプションの観点から開発に活かされたポイントが数多くあるのだ。

 

サブスク、PBの次に展開するのは「玩具の循環」

 

トラーナはPB開発をする製造工場を、既存取引先に紹介してもらっている。先述したように、トイサブ!のPBは既存の玩具にはない特徴をもつ。裏を返せば、工場としては今まで作ったことがない玩具を作ることになりうり、面倒とも捉えられそうだが、工場は新しい玩具の開発を快く受け入れてくれたそうだ。

我々は安定的に製造依頼する予定ということで、工場としては開発が面倒ということはないのかなと思っています。というよりも、今製造を委託している会社は、開発が好きで、「チャレンジングだけどやってみよう」という方が多い印象です。

 

また志田氏によれば、昨今のコロナ禍において、玩具の販売も店舗からオンラインへとシフトしている。そのためトイサブ!のようなオンラインサービスやECでは売上が増加基調で、工場からみればこちらの取引先を増やすことは、経営的にも理に適っているだろう。

 

では、トイサブ!の既存の仕入先はどうか。彼らからすれば、トイサブ!はPB開発などせず、自社の玩具を仕入れてほしいというインセンティブがあるとも感じられる。だが志田氏は、この点を心配はしていないようだ。トイサブ!が玩具を購入しているとはいえ、それは仕入先の売上のほんの一部でしかない。トイサブ!がすべてのおもちゃをPB化するわけでもないので、PBをやったところで、彼らの売上に大きな影響はないのだという。

例えばNetflixは、元々他社製のコンテンツがあって、データを活かしながら自社で研究開発をして、自社コンテンツを作っていますよね。トラーナとしても、様々な種類の玩具があることで、お客さまにいいものを届けられると思っています。だからPBを隠すつもりもないし、PB開発に合意してくれるサプライヤーさんと提携していくつもりです。

 

トイサブ!では今後も、PB開発を進めていく予定だ。現在は木製の玩具を中心に開発しているが、今後は例えば電子玩具等、幅も広げていきたいと志田氏は語る。当然、玩具の幅も広がれば工場も増やす必要があり、これから開拓していく予定だ。

またトイサブ!は次の構想も見据えている。自社ECとユーザーからの玩具仕入れだ。自社ECで玩具をユーザーに販売し、ユーザーはおもちゃが必要なくなったらトイサブ!に当該玩具を買い取ってもらうのだ。トイサブ!はユーザーから仕入れた玩具に清掃及びメンテナンス等の手入れを施し、サブスクリプション用の玩具として扱えば玩具は捨てられることなく循環するし、ユーザーにとっては経済的でもある。

「トイサブ!ECで買われた方は、トイサブ!に販売できます」としておけば、玩具産業にとっていい流れになるのかと思っています。またお客さまの中には、中古でいいという方もいれば、新品がいいという方も一定数いるので、トラーナとしては新たなお客さまにリーチする手段になるとも思います。

ECでは、トイサブ!を運営する上で得た「何歳何か月の子供がどういう玩具をどう評価している」といった情報を公開して、お客さまは「何歳何か月で、こういうことができる」と入力して、新品を買う。でも結局、飽きたり使わなくなったりしたら「それはトイサブ!側で買い取ります」としておけば、お客さまやトイサブ!にとっても嬉しいし、サプライヤーも取引が増えて嬉しいはず。なんとか買い取り機能付きのECを実現したいですね。

 

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トイサブ!を前回取材したのが、約3年前。その時点ではまだPBの取り扱いはなかったが、「PBを作りたい」と志田氏は語っていた。今回は「3年後くらいにECをやりたい」と話している。3年後に、pilot boatでトイサブ!の続報を届けられることを心待ちにしている。

 

インタビューはpodcastでも配信しています

 

トイサブ!に関する志田氏のインタビューはpodcastでも配信中。上記の詳細を聞きたい方は、是非聞いてみてほしい。

(interview / text: 納富 隼平、edit: pilot boat、photo: taisho)