【#CBK】SEQUEL:AIを使ってスナップ写真からアイテムレコメンドや需要を予測

pilot boatで紹介したスタートアップのその後をお伝えする、シリーズ【SEQUEL】。今回は2019年10月に資金調達した、写真から類似アイテムを探し出すファッションエンジン「#CBK scnnr(カブキスキャナー)」を開発する株式会社ニューロープの「その後」を伺った。

(取材:2019年10月)

株式会社ニューロープ 代表取締役CEO 酒井 聡(Sakai Satoshi)

2005年 九州大学在学中、メディアプラネットにてポスター、チラシ、バナー等を多数デザイン。
2009年 株式会社マイナビにてプロモーション、情報誌の編集、市場調査等を担当。マイナビ進学リニューアル、情報誌「進路のミカタ」の創刊の編集デスクとしてプロジェクトを統括。
2011年 中小企業診断士取得。製造業、出版社、商社等、複数社の経営コンサルを経験。
2012年 ウェブインテグレーションを事業とする株式会社ランチェスターでプランニング、情報設計、デザイン、プロジェクト管理に従事。
2013年 IoTに取り組む株式会社Presents square執行役員就任。プロモーション、デザイン担当。
2014年 株式会社ニューロープ設立。代表取締役就任。

 

写真をアップするだけでアイテムを認識

まずはニューロープに関して前回の記事を振り返りたい。

ニューロープは複数の事業を展開している。まずはファッションメディアの「#CBK(カブキ)」だ。インスタグラマーや読者モデルなどが投稿したリアルなファッションスナップを、本人の同意の元キュレーションし掲載している。

(image: #CBK)

 

#CBKでは投稿画像1枚ずつに、アイテムのタグ付けを実施。上画像右下の「秋」「ベージュ パーカー」「マキシスカート ボルドー ギャザー」といった具合だ。このタグ付けをひたすら実施することでニューロープは、数万のスナップ写真とタグの組み合わせを得た。これらを教師データとしてAIと組み合わせたのが「#CBK scnnr(カブキスキャナー)」だ。

#CBK scnnrではスナップ写真(全身のものが好ましい)を解析し、写真上のファッションアイテムを瞬時に判定する。

 

(image: ニューロープ)

例えば上の画像では、自分で撮影した写真を#CBK scnnrが組み込まれたシステムにアップロードすると、「デニムジャケット」「スニーカー / ハイカット / ホワイト」といった具合にアイテムが認識される仕組みだ。

さてそんなニューロープが2019年10月に第三者割当増資による資金調達を発表している。調達金額は1億円、調達先にはVCのほか、ディノス・セシール(以下「ディノス」)という通信販売大手の事業会社も含まれ、「需要予測やトレンド分析などの領域で仮説検証をスピーディに進め、業界の課題解決」に取り組むとしている。

ファッションAIのニューロープ、第三者割当増資により1億円を調達 – 需要予測やトレンド分析のSaaS開発に先行投資する
https://www.newrope.biz/news_20191009/

 

ファッション・バーティカルなSaaSへ

上記資金調達の目的は主にプロダクト開発。AIを扱っている会社の中には最初にファッションを扱っていても、周辺領域にドメインを広げていき、汎用的なAIを作り上げていく会社も多い。その点ニューロープはファッションにドメインを絞り、バーティカル(垂直)なプロダクトを作っていくとする。

汎用AIという意味ではGoogleやAmazonがいつ乗り込んでくるかわからないですし、ファッション業界には特有の課題があります。なのでニューロープはバーティカルなプロダクトをつくっていく方向に舵を切りました。(酒井氏、以下同様)

 

実際、例えばビューティ分野ではAmazonがECページで、YouTubeが動画内でARを用いたバーチャルメイクの機能を実装しており、同機能を開発しているスタートアップには何かしらの影響があるはずだ。アパレルでも同様の事例が生じてもおかしくはない。

そこでニューロープは、サービスのバーティカルSaaS化を進める。#CBK scnnrを展開していく上で、ユーザ企業から「こんなことができないか」というリクエストが多数出てきている。その中でも汎用的なものからどんどん機能を追加し、#CBK scnnrをSaaS化しているのだ。

例えばEC上でのリコメンド機能。ユーザがEC上で好きなインスタグラマーの写真をアップロードすると、EC上からその写真で使われているアイテムに似ている製品を検索できる。例えばグレーのパーカーを着ている写真をアップすると、EC上で当該アイテムと似たアイテムを提示する、といった具合だ。

(image: ニューロープ)

 

#CBK scnnrの利用はECに留まらない。ファッションメディアに導入することでメディアコマースへの導線とする、購入履歴に基づいてカタログをパーソナライズ化する、デジタルサイネージで接客支援をする、監視カメラで来店客を分析しマーケティングに活かす、さらにはAIがオリジナルの柄を生成するといったことも可能だ。今後は販売だけでなく、デザインなどにも機能の幅を広げることでバーティカルなSaaSへと推進していく。

 

SNSの写真を分析して需要予測

ニューロープは#CBK scnnrを用いたファッション解析だけでなく、需要予測、トレンド分析・予測も実施。それが「#CBK forecast(カブキ フォーキャスト)」だ。Instagramなど各種SNSを巡回し、ファッショントレンドを分析。情報を定量化して、企業に情報提供する。情報の母集団としては具体的に「SNS」「(大き目な)EC」「コレクション」で、素材・特徴・柄などの情報を収集している。

もちろんアパレル業界だって、ユーザインタビューをしたり、コレクション情報がまとめられたトレンドブックを分析したり、未来予測は実施してきた。ただユーザーインタビューは性質上偏りが出る可能性があるし網羅性は低い。トレンドブックは汎用的すぎて自社用にさらなる分析が必要だ。

他方#CBK forecastはSNSなどから取得したデータを使ってトレンドを分析するので、網羅性が高い。分析結果はカスタマイズ可能なので、ブランドによって「このブランドだったら、こういうのが流行ってる」といった、より細かくセグメントしたレポートも可能だ。

(image: ニューロープ)

例えば#CBK forecastの実際のクライアントで、シューケアの製造・卸をしている会社がある。この会社は#CBK forecastを使って、世の中の靴のトレンドを分析。「世の中に革靴が増えている」という分析が出れば「革靴用のクリームが必要になる」と推論できる。そうして需要を予測し、製造や小売店への販売に活かしているのだ。

また#CBK forecasではt自社の売っている洋服が、他のブランドとどのように着合わせられているのかということも探れる。「革ジャンには革パンツ」のスタイリングが多いと思っていたが、実際にはジーパンと着合わせられていた。そのためジーパンとセットのMDを増やそう、といった具合だ。

ユーザーインタビューやコレクションのデータは、未来のことを語っていますよね。ですがSNSの情報などからわかるのは「今」の情報。どのようなアイテムがどのくらい流通したかが見えるので、そういった意味では今まで取れていなかったデータが取れるようになります。

 

#CBK forecastは自社の情報だけではなく社会全体を分析するため、自社で作っていなかったアイテムの分析も可能だ。自社では作っていないが実際には多く着られている・いないといった情報は、例えば「赤のアイテムを多めに作ったがあまり着られていないようなので、早めに値引きしよう」といったように、セールや需要予測などにも活かせるだろう。

 

変数が多いECの施策をAIで認識

先述したようにニューロープのファッション・バーティカルSaaSを作り上げようとしており、追加で機能を開発していっている。その一環として挙げられるのが、今回の資金調達の投資元にもなっている、通販事業などを主力とするディノスとの取組みだ。

(image: ニューロープ)

ニューロープはディノスと過去にDM施策を実施。ディノスで買い物した顧客に対して「お客さまが購入したこのアイテムには、こんなスタイリングが合いますよ」とパーソナライズしたDMを送付した。結果は上々で、この縁もあり今回の資金調達に繋がったという。

今後の取組みは大きく2点。まずはAIを活用して、前述のDMのようなパーソナライズ施策を進めること。もうひとつが需要予測だ。

まだキレイにプロダクト化しているわけではないのですが、需要予測については重点的に取り組んでいます。企業から売上情報を提供いただき、かつ商品情報を画像解析。分析した結果は将来のMDや発注に活かされるのかなと思います。

 

アパレルECで売れない商品の写真を、モデルを変えて撮影しなおしたら急に売れ行きがよくなる、といった話は枚挙に暇がない。ただモデルの選定や写真の構図、説明文など、変数が多すぎて人間では効果の推測が難しいが、AIなら定量化できる可能性がある。

#CBKはシステム上、アイテムを全てタグにして特徴化しているので、定量的に効果を把握できます。そのためA/Bテストしないでも、商品情報がある程度わかれば、どのような施策がどの程度影響があるのかを推定できるようになります。


とはいえ、需要予測については大量のデータが必要になる。その点ディノスからは今回出資を受けたこともあり、腰を据えて付き合っていけるような体制が整った。他社アパレル会社にて既に簡単なテストは実施しており「ポジティブな数字は出てきているので、コツコツと伸ばしていきたい」と酒井氏は語る。

 

デザインやMDなど業界全体を救うサービスへ

最後に、今後の#CBKシリーズの展開について伺った。

アパレルや小物、バッグ、靴、帽子といったファッション領域に特化して、多様な価値を、簡単に享受できるようにしたいです。ECにタグを入れるだけで、勝手に需要予測もできるしレコメンドもされるようなイメージです。

 

EC以外にも、店舗のデジタルサイネージを利用した接客支援、監視カメラで来店客を分析してマーケティングの支援をするといったことも考えられる。その分析結果をデータ化すれば、また需要予測などに反映できるかもしれない。

さらにAIがデザインを支援したり、「このトップスには、こういうボトムスとか合わせたらいいですよ」といった自然言語処理にも対応していきたいとのことだ。

サービスを普通に使ってくださるのももちろん嬉しいですし、まだまだ発展途上のサービスなので「こういうサービスにしてほしい」「一緒にやっていきませんか」というお声掛けも、ぜひお願いいたします。

 

(左からCTO荒井氏、CEO酒井氏、VPoE: 石井氏、image: ニューロープ)

 

ファッション業界の課題を、AIなどのテクノロジーを使いながら解決しようとするニューロープ。人口減少、働き手不足、在庫廃棄など、課題も少なくない業界だが、こういったテクノロジーをも用いながら解決できるものもあるだろう。自社の、または業界の課題に取り組む糸口をみつけたい方は、ぜひコンタクトをとってほしい。

(eyecatch image:ニューロープ)

会社名:株式会社ニューロープ
代表者:酒井 聡(Sakai Satoshi)
所在地:東京
設立日:2014年1月
URL    :https://www.newrope.biz/
※情報は記事公開時点のものです。

 

インタビュー内容はpodcastでも配信しています

podcastで取材時のインタビューを配信しています。

 

制作チーム

WRITING
ぺーたろー / 納富 隼平(Notomi Jumpei)
合同会社pilot boat 代表社員CEO
1987年生まれ。明治大学経営学部卒、早稲田大学大学院会計研究科修了。在学中公認会計士試験合格。大手監査法人で会計監査に携わった後、ベンチャー支援会社に参画し、300超のピッチ・イベントをプロデュース。 2017年に独立して合同会社pilot boatを設立し、引き続きベンチャー支援に従事。長文でスタートアップを紹介する自社メディア「pilot boat」、toCベンチャープレゼンイベント「sprout」、その他スタートアップイベントを運営。得意分野はファッション・ビューティ×テクノロジーをはじめとするライフスタイル・カルチャー系toCサービス。各種メディアでスタートアップやイノベーション関連のライター、大手企業向けオープンイノベーション・コンサルティングも務める。
Twitter: @jumpei_notomi
 

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