自宅のバッグを貸出し、定額で借りる。高級バッグのサブスクリプション「ラクサス」

 

存在感を増すライフスタイル分野でのサブスクリプション

NetflixやHuluにSpotifyやApple Music、noteやNewsPicks、dマガジンにクラウドストレージ。ライフスタイルのあらゆる分野でサブスクリプション(定額課金)モデルが普及している。ファッションももちろん例外ではない。エアークローゼットやメチャカリは女性向けに月額制ファッションレンタルサービスを手がけ、男性用ビジネスウェアや腕時計などのサブスクリプションサービスも登場している。

ところでミレニアル世代とは2018年現在で25〜34歳程度になった世代のことでで、購買力をもちはじめている。しかし彼らは上の世代よりも「所有」という概念にこだわらず、必要なら「共有」することも厭わないし、そのほうがスマートだとすら感じている。そうして注目を集めているのがシェアリングエコノミーだ。

ファッションのシェアリングエコノミーは時代の流れとも合理的なように感じる。InstagramなどのSNSで自己ブランディングが重要なミレニアルズは、同じ服で何度もSNSに登場しない。何度も着ない洋服だったら安いほうがいいし、すぐに売却してしまいたい。だから洋服はメルカリなどのCtoCサービスで購入・販売する。もちろん借りることでもそのニーズは叶えられる。

さてここで高級バッグを考えてみたい。上と同じ理屈なら、いくらブランド物のバッグだからって年中おなじバッグを持っていることはあまりスマートとは言えない。とはいえ何十万もするハイブランドのアイテムは簡単には購入できない。CtoCもあるがそれでも高額であるし、偽物のリスクだってある。

そんなニーズを捉えたサービスが高級バッグの定額レンタルサービス「ラクサス」だ。今回はラクサスを運営するラクサス・テクノロジーズ代表取締役の児玉氏に、お話を伺った。

(インタビュー:2018年01月)

ラクサス・テクノロジーズ 代表取締役社長 児玉昇司(Kodama Shoji)

広島市出身。シリアルアントレプレナー。1995年早稲田大学入学半年後に最初の起業。会社売却などを経て、自身4度目の起業となるラクサス・テクノロジーズ株式会社を創業。2015年2月、毎月定額で有名ブランドバッグが無限に使い放題(貸したり借りたり)になるサブスクのC2Cファッションシェアアプリ「Laxus(ラクサス)」をローンチ。ローンチから3年弱で累計流通金額180億円を突破。2017年3月までにWiLなどを中心に20億円以上を調達。現在シリーズC、調達中。 MMD総研のシェアリングエコノミーサービス調査によるとラクサスは、認知・利用率、共にAirbnb、Uberに続き第3位(女性に限ると認知・利用率ともにAirbnbに続き第2位)。今後、NY、パリ、ロンドン、シンガポール、香港での展開を予定。NYでの事前登録では日本ローンチ時の実に3倍をすでに受注。 早稲田大学Executive MBA在籍。

 

月額6800円で高級バッグが借り放題

ラクサス・テクノロジーズが展開するサービスは「ラクサス」と「ラクサスX(エックス)」。

まずラクサスは、2015年にローンチした高級バッグのサブスクリプションサービスだ。ユーザは月額6800円を支払うと、ルイヴィトン、エルメス、シャネルなどハイブランドのバッグが借りられる。インタビュー現在借りられるバッグは2万3千個。高級バッグを購入する消費者は年収800万円以上の世帯が多いが、ラクサスユーザはそれより年収が低いユーザも多い。年齢は24-50歳に広く分布しており、特定の世代が多いということはなく、ミレニアルだけでなく幅広い世代に受け入れられているのが、他のシェアサービスとの違いだ。

ラクサスでは特定のバッグをずっと使っていることも可能だし、飽きたら他のバッグを借りることも可できる。最新のバッグを借りてもいいし、季節に合わせたアイテムを選択してもよい。口コミを観察していると「自分で買う前に試してみたかった」「旅行や結婚式など、買っても一時的にしか使わないバッグにも便利」「色々なバッグを試せる」などの感想が上がっている。

ラクサスはバッグの箱にもこだわりデザイン性を高めている。縦型にすることで箱が横に置かれてしまうことも防止。

 

ラクサスで驚くべきは継続率。実に90%以上のユーザがサービスを使い続け、チャーン(退会率)が低いのだ。「高級バッグをもつだけでファッショナブルにみえます。一回使ったら他のバッグも使いたくなり、なかなか退会しないのだと思います」。

 

ラクサスXではユーザのバッグを他のユーザに貸し出す

他方の「ラクサスX」が「ラクサス」と異なるのはバッグの調達方法だ。ラクサスの在庫はラクサス・テクノロジーズ社が自社で調達・保有しているが、「ラクサスX」ではユーザが自身のバッグを貸し出す。つまりユーザAがバッグを貸出し、ユーザBがそれを借りるというCtoCのサービスなのだ。(ちなみにラクサスXの「X」はe「X」changeからきているそう)

筆者の感覚ではあるが、複数の高級バッグを所有していたり、なかなか使わないけど捨てたり販売したりするのはもったいないというブランドバッグを所持している女性は少なくないように思う。そのようなユーザがバッグをラクサスX経由で他のユーザに貸し出すのだ。

貸し出すユーザのメリットはまず、お小遣い稼ぎになること。バッグひとつで月2000円が稼げる。ラクサスXのアプリを開けると、「このバッグはxx人が待っている」という情報が掲載されており、これらの情報をもとに収益率を算定し、「使っていないから貸し出す」のではなく「貸し出すために買う」ユーザもいるそうだ。

 

バッグを自宅で保管しておくと「カビが生える」「日焼けする」「型崩れする」といった被害がでる恐れがある。バッグを借りるユーザからすれば、CtoCのサービスだからといって汚れたアイテムが送られてくれば、次回から借りなくなってしまうかもしれない。そこでラクサスXでは、バッグを貸し出すと、無料で手入れされて保管してもらえる仕組みになっている。ラクサスXにバッグを預けておくと、角のスレを補色してくれたり(もちろん限界はある)、保管は適温適湿でしてくれる。つまりユーザはバッグを貸し出すとキレイな状態で保管してくれるし、お小遣い稼ぎにもなるというわけだ。ユーザのメリットは大きい。

 

「私の『友だち』なら高級バッグが欲しい」

今でこそ「『所有』から『共有』へ」「シェアリングエコノミー」などといった言葉が市民権を得ており、ラクサスもその文脈のサービスだと理解できる。しかしラクサスをローンチしようとした当時は「社員や投資家全員に反対された」そうだ。それにもかかわらずなぜラクサス・テクノロジーズ社は、高級バッグのサブスクリプション事業を始めたのだろうか。

社内でアンケートをしたんです。当時流行していた比較的リーズナブルでコスパの高いバッグとハイブランドバッグを並べて、「あなたはどちらのバッグを使いたいですか」と質問しました。しかしテスト結果は散々。みんな「最近はこういうバッグが流行っている」と言って、コスパの高いバッグを選ぶのです。

じゃあ諦めようと思い、バッグが不要になるからスタッフの女の子にあげようとしたんですね。そうしたらさっきまで全員がコスパのいいバッグが欲しいと言っていたのに、みんなハイブランドのほうを選びたがるんです。「どうせもらうならハイブランドのバッグがいい」と。

何かおかしいなと思って、別のグループにインタビューをしました。ただし今度は「『あなたの友だち』だったらどっちが使いたいと思いますか」と聞いたんです。そうするとみんなブランドバッグを選びました。みんな口には出さないけど、これが本当のニーズだと思ってラクサスを開発することに決めたんです。

 

こうしてラクサス・テクノロジーズ(当時の社名は「エス」)はラクサスをローンチ。その結果3年で数万人が使うサービスまで成長。サブスクリプション・レンタルモデルは(外資系大手証券会社によると)ラクサスが世界初で適用を始めたとしており、今では類似のビジネスモデルも次々と登場してきている。

ラクサス・テクノロジーズ社はピッチイベントなどにもたびたび登場。

 

またラクサスは、海外でのサービス展開を目論んでいる。欧米ではニューヨークやパリ、ロンドンなどのファッションの中心的な都市を中心に、アジアではシンガポール、香港などの成長著しい地域での展開を考えているそうだ。ニューヨークではすでに事前登録を開始しており、日本ローンチ時の3倍の反応を得ている。

海外展開を考える際、日本はやはり言語という大きな障壁があります。その点バッグを含めてファッションは世界共通言語で、世界展開しやすいと考えています。

 

データを活用して事業の幅を広げる

ラクサス・テクノロジーズ社では、単にバッグを貸し出すだけではなく、各種データ分析にも力を入れている。まずわかりやすいのはリコメンドだ。ことファッションにおいては、特定のアイテムが欲しいと決まっている場合もあるが、逆に「バッグが欲しい」と抽象的なニーズのみがある場合も多い。このような場合は、検索したからといって欲しいものが見つかるわけでもないし、そもそもどうやって検索すればいいかもわからない。そんなときに「あなたはもしかしてこういうアイテムが欲しいんじゃないですか」というふうにリコメンドするのだ。

また他にも、ブランドごとに相性があることが判明している。たとえば「ブランドAが好きな人は、ブランドBも好きになりやすい」「ブランドCが好きな人はブランドDを好まない」といった具合だ。このようなデータが次々と溜まっていき、リコメンドの精度もあがっている。

そして現代はビッグデータ分析が隆盛を極めている時代である。以上のようなリコメンドデータや継続率のデータは、他のサービスとも連携する未来があるかもしれない。事実、他の企業がラクサスを訪ね、データ活用についての議論を重ねることもあるそうだ。

既存のファッション業界ではデータをうまく活用できていない面もあります。たとえば百貨店にある高級ブティックは百貨店のポイントカードが使えないケースがありますよね。ブティックのブランディング的にはいいかもしれませんが、引き換えにそのブティックは顧客のデータを入手できません。

ラクサス・テクノロジーズでは趣向のデータや行動データなど色々なデータを取得していますし、他の方々が必要なデータを提供できるかもしれません。とはいえデータを取得はしているものの、活かしきれていないのも事実です。今後は他の事業者とも連携してテクノロジーを活用していきたいですね。

 

もうひとつおもしろい事例がある。ラクサスのHPを見ると、バッグ単体はもちろん、バッグと合わせるためのコーディネートもあわせて掲載されているのがわかる。またラクサス社は「ラクサスコーデ」というアプリも展開。こちらはバッグ専門のインスタグラムといったものだ。

バッグと一緒に見本コーディネートを掲載(左) ラクサスコーデではユーザがバッグを使ったコーデを投稿(右)

 

ラクサスには「買う勇気はないけど、せっかくだから借りて試してみたい」というニーズがあるそうだ。しかしその場合、バッグに合うコーディネートに悩むユーザも多いらしい。そこでバッグと一緒にそのバッグに合うコーディネートを掲載してみた。これが功を奏し、結果的にコンバージョン率は2.7倍にあがった。中にはこのコーディネートをそのまま販売してほしいなんていう声もあがっているらしい。

 

バッグをもって何をするのか。ユーザの心理と行動を読み解く

最後に、今後のラクサス・テクノロジーズの展開について伺った。

ファッションとユーザの関係はどんどん変わっていっています。たとえば今だったらインスタグラムに何度も同じ服を掲載しないように、CtoCやサブスクリプションサービスを使って次々にファッションアイテムを変えていく「ワンショット消費」をするユーザが多くなっていると言われています。これとラクサスのサブスクリプションモデルは非常に相性がいいですが、バッグを持っていただくだけでなく、バッグを持って何をするかに対応していかなくてはいけません。

あとは繰り返しになりますが、これから海外進出やデータ活用もより力をいれていきます。

 

所有から共有、インスタグラムなど写真SNSの隆盛、ワンショット消費、ブランド信仰の衰退、CtoCの流行、そしてサブスクリプションサービスの普及。2010年代は明らかに、ファッションと消費者の関係が大きく変わっている年代である。ラクサス・テクノロジーズ社はそんな時代の流れをおさえ、拡大を図っているように見える。海外展開やテクノロジーの活用など、時代の流れをキャッチアップするうえでも、ぜひ同社の動きを追ってみてほしい。

会社名:ラクサス・テクノロジーズ株式会社
代表者:児玉昇司

所在地:広島(本社) / 東京
資本金:16億324万110円(インタビュー現在)
設立日:2006年8月31日

URL    :https://laxus.co/

 

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AUTHOR
納富 隼平(Notomi Jumpei)
合同会社pilot boat CEO
1987年生まれ。2009年明治大学経営学部卒、2011年早稲田大学大学院会計研究科修了。在学中公認会計士試験合格。大手監査法人で会計監査に携わった後、デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社に参画。毎週開催ピッチイベントMorning Pitchをはじめ、300超のピッチ・ベンチャーイベントをプロデュース。
2017年に独立して合同会社pilot boatを設立し、引き続きベンチャー支援に従事する。スタートアップ紹介メディア「pilot boat」、podcast「pilot boat cast」、toCベンチャープレゼンイベント「sprout」を運営。得意分野はFashionTechをはじめとするライフスタイル・カルチャー系toCサービス。
2017年よりASCII STARTUPでBtoCベンチャーのコラムを連載中。日本スタートアップ支援協会顧問。
twitter: @jumpei_notomi

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