ヴィジュアル系のグローバルニッチを狙う。ファンやアーティストが集うコミュニティアプリ「VisUnite」

ヴィジュアル系バンドを応援するためのアプリ

世界の音楽業界が復権している。国際レコード産業連盟(IFPI)によると、2017年の世界の音楽市場は約173億ドル。これは前年から8.1%増加したもので、年々増加しており今後も拡大傾向の見込みだ。CDやダウンロードなどの売り切りコンテンツが衰えているなか、この成長を牽引している要因は「ストリーミング」(ただし2018年4月現在、日本がその波に乗れてるとは言い難い)。また世界最大のイベントプロモーション企業「ライブ・ネイション」の2017年の売上高は103億ドルで7年連続で過去最高を更新。ライブ市場の成長も窺える。

このように、今グローバルレベルで音楽業界に変革が起きている。テクノロジーを使って音楽の楽しみ方は多様化しているし、逆に「体験」を求めてライブやフェスは活況。アメリカでアクセラレーションプログラムを運営するTech Stars が音楽専門のプログラムを運営しはじめ、業界としてもテクノロジーに興味を示し、新しいサービスを受け入れる土壌は広がっているように感じる(日本の動きが世界と同様とは限らないが)。

今回紹介するサービスはユナイテッドドリーム株式会社が提供するVisUnite(ヴィジュナイト)。ヴィジュアル系バンドの応援アプリだ。ファンはアプリを通じて好きなバンドを応援できるし、応援されたバンドもライブへの出演権を得るなどのメリットがある。代表取締役社長の市橋氏にお話を伺った。

ユナイテッドドリーム株式会社 代表取締役社長
市橋 秀幸(Ichihashi Hideyuki)

1987年生まれ。関西大学商学部卒業。 2010年4月にシチズン時計株式会社に営業として新卒で入社。
その傍らバンド活動・エンターテイメントにまつわるボランティア活動を経験。 2014年に音楽・エンターテイメントにまつわる事業に貢献したいという一身で、シチズン時計を退社。
“エンターテイメント”を通じて新しい価値を生み出す事を理念としたUNITED DREAM INC.を設立する。 スウェーデンのアーティスト”YOHIO”を仲間にいれ、 彼をメインアンバサダーとしたV系プラットフォームアプリ“VisUnite”を2017年5月にリリース。

 

独自ライブイベントもあるギフティングアプリ

VisUnite(ヴィジュナイト)はヴィジュアル系バンドに特化した、ギフティングもできるコミュニティアプリだ。ギフティングとはユーザが演者に対してポイントなどを送ること。ユーザはVisUnite内でLOVUと名付けられた仮想アイテムを応援ポイントとしてアーティストに送り、好きなバンドを応援することができる。ファン側にもランキングがあり、「自分がいちばん応援している」といったある種の承認欲求も満たされる。この仕組はアーティスト側もユーザのことを覚えるきっかけにもなり、ライブのようなリアルな場だけでなく、オンライン上でもユーザとアーティストの距離が近くなる。

UNITED DREAM Inc.の市橋氏

VisUniteのアプリを開くと、SNSのようにアーティストが投稿した記事が並ぶ。アーティストが記事を投稿し、ユーザはその投稿にLOVUをする。アーティストはこのLOVUを集めることによってマネタイズもできるし、アプリ内のランキングにピックされることでプロモーションにもつながる。そして特に若手アーティストには嬉しい、ライブの出演権が得られる可能性もあるという。

VisUniteは「VisUnite Fest(ヴィジュナイト フェスト)」という独自のライブを運営。VisUniteが選んだ人気ヴィジュアル系バンドに加え、VisUniteのアプリ内で行われる投票を勝ち抜いたアーティストも出演権をもっている。出演するアーティストには武道館で公演したことがあるようなグループも複数おり、ライブは毎回満員御礼。若手アーティストにはまたとないアピールの機会になる。なのでユーザは好きなアーティストを応援するために、アプリ内の投票やSNSでの拡散にも積極的に協力する。

(Credit by UNITED DREAM)

現役のアーティストがサポーターとして参加

実は「ヴィジュアル系」というのは日本発祥だ。明確な定義はないものの、独特のメイクとサウンドを伴ったロックバンドで、海外ではそんなにメジャーな存在ではないことも多いという。それもあってか、「ヴィジュアル系」という言葉はsushi(寿司)やkaraoke(カラオケ)と同様、「日本語がそのまま英語になっている単語」で、海外では「visual-kei」と呼ばれているらしい。

ヴィジュアル系の音楽はアニメの主題歌となっているケースも多く、日本のアニメはクールジャパンとして海外に売り出され、その主題歌からビジュアル系にたどり着きそのバンドのファンになるという外国人も多いようだ。先述したVisUnite Festなどヴィジュアル系バンドが登場するライブには外国人も多く、オーディエンスの10%以上が外国人というケースも珍しくない。日本への観光のついでにお目当てのバンドのライブを訪れるそうだ(ライブのついでに観光するといったほうが適切かもしれない)。ちなみに外国人の方は、日本のアニメが多く放送されているヨーロッパやアジア、意外にもブラジルなどからの来訪が多いという。

VisUniteのオフィシャルインフルエンサー兼ギタリストのMiAさん

VisUniteには、アプリを利用しているユーザとしてのアーティストだけでなく、25名ほどのオフィシャルインフルエンサー兼サポーターアーティストがいる。そのひとりがMiAさんだ。

VisUniteはユーザはもちろん、アーティストのためにも作っているサービスです。なので一部のアーティストにはサポーターになっていただき、フィードバックをいただいています。(市橋氏)

MiA(ミア)

ギタリスト、音楽プロデューサ。15歳からヴィジュアル系バンドのギタリストとして活躍。2011年に加入したMEJIBRAY(メジブレイ)では美形ギタリストとして注目を集める。またMEJIBRAY以外では、X JAPANのToshlのライブにサポートギタリストとして参加したりと幅広く活躍。
MEJIBRAYの活動休止後は、様々なセッションやプロジェクト等にサポートギタリストとして参加しつつ実業家としての顔も見せ、ファッションブランドやスイーツとのコラボレーション等、音楽に限らない幅広いフィールドでの活動を始めている。
Official Site / Official Twitter / Instagram

VisUniteは最初の構想を聞いたときからいいサービスだなと思って、ずっと応援しています。そもそもヴィジュアル系に特化したサービスというものがないですし、VisUnite Festのようなイベントがあることで、若手のアーティストにはチャンスが生まれていて、良い仕組みになっています。

ただプラットフォームだけで業界がよくなるわけではありません。VisUniteはユーザの意見も、われわれアーティストの意見も真摯に聞いてくれて、サービスに反映していただいています。(MiA氏)

日本発のヴィジュアル系、ギフティングサービスに勝機を見出す

市橋氏はもともと、時計会社に営業として勤めていた。しかし日本のエンタメ産業に貢献したいと思って退職。当初は分散型メディアやインフルエンサーのマネジメント事業などを手がけていたが、世間ではギフティングのサービスなどが脚光を浴びだしていた。

エンタメのサービスを手がけたいと思っていたので、ギフティングサービスなどはもちろんチェックしていました。それで気づいたのですが、流行っているサービスは女性が配信して、男性が視聴しているパターンが多かったんですね。

他方で私は、昔からヴィジュアル系バンドに携わっていて、男性が演者でオーディエンスが女性という構図に慣れていたんです。なので男女が逆転して、かつヴィジュアル系という世界にも通用するジャンルに特化すれば大きな市場があるんじゃないかと思ったのです。(市橋氏)

VisUniteについての意見を交換する市橋氏とMiA氏

市橋氏は学生時代からバンド活動をしていて、音楽やバンド活動に造詣が深い。また前述の通りヴィジュアル系は日本発のコンテンツとして世界から注目されている分野。事業として挑戦する価値はある判断し、ユナイテッドドリーム社はVisUnite事業へ舵を切った。

コンセプトを固めた市橋氏は、実際にヴィジュアル系バンドとして活躍している方々にも相談。必ずしもアーティストたちはテクノロジーに詳しくないこともあって厳しい評価もあったそうだが、すでにヴィジュアル系ギタリストとして人気を博していたMiA氏をはじめ、応援してくれる人も多数いた。「面白いからやったほうがいい。ダメだったらまた新しいことをやろう」と言われていたそうだ。

始めは皆さん、「変なやつがよくわからないことをやっているな」という感想だったと思います(笑)

ただ何もないところからビジョンを語りつつ、実際にプロダクトを見てもらったり、ライブイベントを運営したりして少しずつ信頼を積み重ねていくと、少しずつ協力してくれる方が増えていきました。

クラファンやチケッティング、物販まで。アーティスト支援ができるサービスへ

先述したように日本は、音楽とテクノロジーを組み合わせたMusicTechの分野で、世界に先んじているとは言い難い。たとえばライブにしても、レーベルや事務所と関係で写真撮影が禁止されているケースは多いし、大きなフェスならいざ知れずライブが配信をするような機会も少ない。MiA氏曰く「歴史的に事務所やレーベルがコントロールしてきたので、アーティストもそういう思考の方が多い」という。

その点VisUniteではまだサービス展開はしていないものの、たとえば1曲限定で写真を撮れるようにしたりライブ配信をしたりと、ライブ体験をアプリを通してリッチにするようなことも考えているそう。またライブに協賛や広告なども取り入れて、入場料以外でもマネタイズできる仕組みをVisUnite Festを通して実行・アーティストのマネタイズ多様化にも貢献している。

市橋氏はVisUniteを、「ビジュアル系のことならVisUniteをチェックするよね」といった感じで、ビジュアル系が好きな人のたまり場にしたいと意気込んでいる。現在はギフティングが中心だが、コミュニティ機能やライブ配信、アバターなどのファン向けの機能に、チケッティングや物販、クラウドファンディングなどのアーティスト機能など、まだまだやれることはたくさんあるという。そして本格的な海外対応もこれからだ。

VisUniteとはVisual-Kei(ビジュアル系) と Unite(結合する) をかけ合わせた造語で、「ビジュアル系の世界をつなぐ」という意味が込められており、「世界をつなげるものを作れているという実感がある」という。

ビジュアル系は日本が強いコンテンツということで日本発祥である意義があるし、世界中にファンがいるから世界に発信する必然性もある。VisUniteは2017年にローンチしたばかりのまだ新しいサービス。今後も機能やファンを拡充し、世界に日本の”Visual-Kei”を、アーティストと一体となって発信していってほしい。

会社名:ユナイテッドドリーム株式会社
代表者:市橋 秀幸

所在地:東京
資本金:4,200,000円
設立日:2014年

URL    :http://visunite.com/

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AUTHOR
ぺーたろー / 納富 隼平(Notomi Jumpei)
合同会社pilot boat 代表社員CEO / ライター
1987年生まれ。2009年明治大学経営学部卒、2011年早稲田大学大学院会計研究科修了。在学中公認会計士試験合格。大手監査法人で会計監査に携わった後、ベンチャー支援会社に参画し、300超のピッチ・ベンチャーイベントをプロデュース。
2017年に独立して合同会社pilot boatを設立し、引き続きベンチャー支援に従事。長文スタートアップ紹介メディア「pilot boat」、podcast「pilot boat cast」、toCベンチャープレゼンイベント「sprout」を運営。得意分野はFashionTechをはじめとするライフスタイル・カルチャー系toCサービス。各種メディアでスタートアップやイノベーション関連のライターも務める。2017年よりASCII STARTUPでBtoCベンチャーのコラムを連載中。
Twitter: @jumpei_notomi