Share children's clothes in society. Social closet that will help Mama "Carry on"

 

子供服を社会全体で譲り合う

未就学児の洋服は寿命が短い。子供の成長が早く、すぐにサイズアウトしてしまうからだ。たとえば今年買ったコートは来年にはもう着られず、このコートは数ヶ月しか出番がない。兄弟がいたり近所に近しい年齢の子供がいればお下がりとして使えるかもしれないが、少子化が進んだ昨今では、それも少しずつ難しくなっている。

本日紹介するサービスはキャリーオン。子供服のユーズド・シェアリングサービス。子供服をキャリーオンに送付し、ポイントを受け取る。今度はそのポイントも使って、他の洋服を購入できるという、子供服を中心としたコミュニティシステムだ。

なぜ総合型のCtoCではなく、子供服に特化したサービスが必要なのか。一次流通事業者との関係はどうなるのか。代表取締役の吉澤氏に話を伺った。(インタビュー:2018年01月)

株式会社キャリーオン 代表取締役社長 吉澤 健仁(Yoshizawa Kenji)

同志社大学法学部卒業後、資生堂に入社。化粧品の営業に従事。その後、WEBサイトの企画・制作・プロモーションを行うエスト株式会社を創業し、代表取締役に就任。WEBサービスの立ち上げ支援、ECビジネスのコンサルティングなどに従事。2013年5月キャリーオン設立。

 

忙しいママのため、面倒なことはすべてキャリーオンが実施

キャリーオンが主に扱うのは小学校に入る前、50-140サイズの未就学児向けの洋服だ。小学生くらいになると翌年くらいなら同じ洋服も着られるが、この世代は成長が早く、今年ピッタリの洋服は来年には着れない。

そもそも未就学児のママは、子供の洋服にさまざまな課題を抱えている。

  • 買ってもすぐに小さくなってしまう
  • 身近にあげられる人がいない
  • いつも新品ばかりはもったいない
  • リサイクルショップに出してもお金にならない
  • フリマやオークションは出品ややりとりに手間がかかる

子供服が着られなくなるのはしょうがない。だったらCtoCサービスで販売したらいいのでは、と思うのは早計だ。CtoCサービスは自分で撮影、値付、やり取り、販売、梱包、送付、レビューと、意外と手間がかかる。仕事をしたり子供の面倒をみながら何着もこれらの手続きをするのは、ママにとって大変な苦労。そこでこれらの問題を解決するためのサービスが必要となる。それがキャリーオンだ。

キャリーオンは子供服専門のユーズド・アイテムを販売したり購入できるサービスだ。ビジネスモデルはCtoCではなくCtoBtoCの買取販売モデル。つまりユーザ間で直接やりとりするのではなく、間にキャリーオンが入る。

手放したい子供服が出てきたユーザはまず、キャリーオンに発送キットをリクエストする。そうすると専用の発送キットが自宅に送られてくるので、それに洋服を詰めてキャリーオンに送付する。ユーザによっては30着ほど送ってくる方もいるそうだ。ちなみになんでも販売できるわけではなく、新品のときに数千円以上の、ブランドアイテムだけが買い取ってもらえる。(対象アイテムはこちらから確認していただきたい)

 

送付したら、キャリーオンの査定を待つ。内容に同意したら販売完了。キャリーオン内で使えるポイントや、ギフト券がもらえる。

子供服を探しているユーザから見ると、キャリーオンはEC。他のECと同じように商品を購入できる。支払いには販売したときにもらったポイントを充当することも可能だ。

ユーザの手続きが簡単な分、キャリーオン内では商品受取、査定、商品登録、撮影、保管、発送と、やらなければならないことは多い。また大人服と違って、硬貨がポケットに入っていたり、靴に砂が入っていたりと、子供服ならではの対応事項もある。ちなみに子供服だと、保育園用の服にはタグに名前が書いてあるケースがあるが、キャリーオンはこれをキレイに消すノウハウがあるため、このようなケースも安心して出品可能だそう。

また子供服は単価が低いため、いかに業務を効率化できるかが肝心である。この点キャリーオンは、専用の写真撮影システムを用意し、効率的に撮影を実施している。撮影が終われば倉庫に保管し、商品購入を待つだけだ。売れない商品は自動的に値下げされるシステムになっているため、滞留在庫になることはほとんどないし、次回からの買取価格に反映される。

キャリーオンのビジネスモデル

 

子供服の課題を解決することには、社会的な意義がある

キャリーオンがローンチしたのは2013年。フリル(2012年ローンチ、2016年楽天にバイアウト)やメルカリが、まだ今のような活躍をする前である。吉澤氏は子供服の買取販売のどこに勝機を見出したのだろうか。

ちょうどスマホを使ったCtoCが面白くなるんじゃないか、と一部で言われている時期でした。ECの世界ですとアマゾンや楽天のような総合型もありますが、特定のジャンルに特化したECもあります。同様にCtoCでも特化型のサービスも必要となると直感したんです。

そうしていきついたのが子供服でした。子供服はまだ着られるのにすぐにサイズアウトしてしまいます。もったいないし、環境にだって優しくありません。この問題を解決できたら社会的に意味のあるサービスになれると思いました。ビジネスモデルなどは多少CtoCから変更することにして、この分野で勝負することに決めました。

 

キャリーオンは吉澤氏と長森氏の共同代表。吉澤氏がビジネス面を、長森氏がサービス面を主に担当している。長森氏が共同創業した経緯について、筆者が別機会でしたインタビューを引用したい。

吉澤がキャリーオンの原型を考えついたときに、子供がいた私に「このアイディアをどう思うか」と相談があったんですね。ちょうど同じ時期に、私は自分で子供服やチャイルドシートをSNS経由で販売して、すぐに引き受け手がみつかるという経験をしたばっかりだったのです。直感的にこのビジネスにはニーズがあると感じて、キャリーオンを吉澤と共同創業しました。

実はこの子供服のC(toB)toCというモデルには当時、キャリーオンの他にも何社かプレイヤーが存在した。しかし今では国内のほとんどのプレイヤーが撤退している。

やってみてわかったのは、子供服ビジネスの立上げには時間がかかるんです。このビジネスのユーザはママで、必ずしもネットリテラシーが高いわけではなく、ネット広告で一気にユーザを得るのが難しいのです。

 

ママビジネスで有効なマーケティングのひとつは、いまだに口コミだそう。CMなどを大々的にうてばまた話は違うかもしれないが、ママユーザは意外に広告では獲得できないらしい。SNSなどのデジタルマーケティングを主戦場とする企業にとって、ママユーザの獲得は大変なのかもしれない。ライバル企業の中には大企業もスタートアップもいたが、今ではほとんどのプライヤーがいずれも撤退してしまって、キャリーオンだけが事業を継続している。

 

一次流通事業社とも連携して、ビジネスを拡大

キャリーオンは他の事業者ともさまざまな取組みをしている。わかりやすいところではママ向けのリアルイベントとのタイアップ、意外なものでは新品子供服のネット通販事業者との取組みだ。キャリーオンはユーズド・アイテムの事業者で、一次流通事業者とはライバル関係にあるように思える。

もちろんライバルである側面はあります。しかしほかのCtoC事業者の台頭もあり、一時流通の方々にとって、二次流通は無視できなくなってきました。そこでキャリーオンは一次流通事業者との提携をはじめたのです。

 

一次流通のセレクトモールユーザは、買ったアイテムをキャリーオンに送付する。そうするとそのセレクトモールで使えるポイントがもらえる。つまりユーザからみると実質的にアイテムを下取りして、新しいアイテムを安く購入することができるのだ。セレクトモールとしてもユーザを囲い込めるメリットがあるし、キャリーオンは取扱いアイテムが増える。今後キャリーオンではメーカーの新古品(生産したが販売しきれないで在庫になっている商品)などを扱う予定もあるそうだ。

キャリーオンのリアルイベント出展の様子(credit by キャリーオン)

 

また2017年には、内閣府と「こども服みらいファンド」というプロジェクトを開始。ユーザが不要になった子供服を送付するところまではキャリーオンと同じ。しかしこちらのファンドではユーザはポイントを得るのではなく、そのポイント相当額を子供の貧困対策のための寄付にまわす、という仕組みだ。政府機関がスタートアップを提携会社として選定しプロジェクトをまわしていくというのは非常に珍しい。

 

ベビーカーや、ママの服も扱えるように

子供服を社会全体でリサイクル仕組みを作ろうとしているキャリーオン。今後の展開はどのように考えているのだろうか。

今は倉庫や物流の関係もあって洋服しか回収していませんが、ベビーカーやベッド、チャイルドシートなどを扱ってほしいという声を多くのお客さまから頂いていますので、それらを取り扱えるようにしたいですね。また子供の洋服を送るついでに、自分の洋服も販売したいというママも一定数いますので、ここもすくい上げていきたいです。

仕事や家事に育児と忙しいママのために、これからも尽力していきたいと思っています。

 

会社名:キャリーオン株式会社
代表者:吉澤 健仁/長森 真希

所在地:東京都
資本金:非公開
設立日:2
013年5月1日
URL    :https://carryonmall.com

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AUTHOR
納富 隼平(Notomi Jumpei)
合同会社pilot boat CEO
1987年生まれ。2009年明治大学経営学部卒、2011年早稲田大学大学院会計研究科修了。在学中公認会計士試験合格。大手監査法人で会計監査に携わった後、デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社に参画。毎週開催ピッチイベントMorning Pitchをはじめ、300超のピッチ・ベンチャーイベントをプロデュース。
2017年に独立して合同会社pilot boatを設立し、引き続きベンチャー支援に従事する。スタートアップ紹介メディア「pilot boat」、podcast「pilot boat cast」、toCベンチャープレゼンイベント「sprout」を運営。得意分野はFashionTechをはじめとするライフスタイル・カルチャー系toCサービス。
2017年よりASCII STARTUPでBtoCベンチャーのコラムを連載中。日本スタートアップ支援協会顧問。
twitter: @jumpei_notomi