プレイリスト共有のDIGLEがアップデート。音楽データ利用のプラットフォームに

 

Spotifyのプレイリスト共有サービスとしてリリース

日本の音楽スタートアップは数少ないのですが、そのひとつにDIGLEがあります。DIGLEはspotifyの音楽リストをDIGLE上で公開できるというサービス。日本だとそもそも「プレイリスト」という単語が市民権を得ていないですが、海外では結構普及しているようです。たとえば有名アーティストが新人アーティストの入ったプレイリストを作成し、その新人アーティスト認知のきっかけになる、といった動きが起きているようです。

DIGLE(ディグル) – Spotifyを利用した音楽共有プラットフォーム
https://digle.tokyo/

ところで昨今の音楽業界ではストリーミングサービス(以下「ST」と表記しているところもあります)が話題に上らない日はありません。STはSpotifyをはじめ、Apple Music、AWA、LINE music、Google Play Music、Amazon Prime Music、(ちょっと意味が違うけど)Youtubeなど、多くのプレイヤーがしのぎを削っています。今回は割愛しますが、近年進化が激しいAIスピーカーとの相性も抜群です。

ストリーミング≒サブスクリプションサービスはプレイリストと相性がいいのです。なぜなら定額使い放題だから。今まではCDやダウンロードで買ったものしか聴けなかったものが、登録されている曲が聴き放題になります。このときアーティストごとに聴く必然性はないわけです。spotifyがわかりやすい(というか私がspotifyしか使っていないので他はよくわかりません)ですが、ここには色んなアーティストや楽曲を組み合わせたプレイリストが無数に存在し、ジャンルや音楽の種類ごとにキュレーションされています。

そんな背景もあって(多分)DIGLEが登場。そして本日01月13日に2.0版がリリースされました。

 

分析データを利活用できる音楽プラットフォームへアップデート

新しくなったことで、こんなことができるようになった模様。個人的には「音楽(プレイリスト)版のTwitter」って感じがしました。

  • マイページがもてる
  • これによりお気に入りのプレイリストやアーティストがフォローでき、曲の追加など、それに関する通知が受けられる
  • プレイリストをメインにおいているサービスなので、Spotifyでやるよりもプレイリストが作りやすい。そもそもDIGLE上でプレイリストが作れる
  • ちょっと時間はかかるが、soundcloudとも連携予定
  • イベント機能を実装する。たとえばプレイリストにいるアーティストがイベントに出ることが判明したら、通知が来るようになる

また今後のDIGLEは「分析データを利活用できる音楽プラットフォームを作る」とのこと。プレイリストを起点にデータが集まってくるので、それをアーティストが楽曲制作やライブ、マーケティングなどに活かせるようなプラットフォームを目指すとのことです。

 

ビッグアーティスの登場で節目が変わるか

以上DIGLEの説明になりましたが、New DIGLEのお披露目を兼ねてトークイベントが開催されました。以下はそのレポートになります。筆者の私見を交えておりますがご容赦ください。なおTwitterのモーメントに詳しくまとめていますので、詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
https://twitter.com/i/moments/952124914781208577


テーマは「音楽ストリーミングサービスでのプロモーション戦略」。登壇者は以下の方々。
・近藤潤治氏(ユニバーサルミュージック合同会社)
・山本祐哉氏(TuneCore Japan)
・西村謙大 (株式会社CotoLab. / DIGLE代表)

まず最初にSTとCD・DLの違いとして、売れる期間が異なるそう。CD・DLは発売日に動きが集中しますが、STはそこまででもない。むしろ小さなニュースが出るとちょっと聞かれる数が増えるそうです。なので必ずしも新曲リリースが売上につながるわけでわなく、継続的なニュースや情報発信もこれからは重要になりそうです。

 

日本の音楽市場は世界からみるとガラパゴスってると言われています。権利関係がガチガチで、アーティストだけ、レーベルだけ、xxだけがSTやっちゃえ!と思ってもなかなかできないそう。とくにJPOPはSTで聞けないことも多いですね。つい最近も宇多田ヒカルさんがSpotifyなどで聞けるようになってニュースになったほどです。ビッグアーティスト(福山雅治やドリカムなど)がSTに登場していることで節目が変わるタイミングでもありそうです。

蛇足ですが、本日聞いていた限りユニバーサルミュージックさんはSTにも前向きな印象でした。(近藤さんだけかもしれません笑)

 

日本で目指すのは1日8千再生

個人的に面白かったのはこのくだり。たとえばSpotifyではアーティスト側が、どこの国・地域でどんな曲がどれだけ聞かれているのかということを確認できます。そうすると海外アーティストが、日本でよく聞かれているから日本のツアーをしよう、この曲が人気だからセットリストに加えよう、なんっていうことができるわけです。つまりアーティストサイドも、デジタルをうまく使わなければならないというわけです。

デジタル利用の一例としてDIGLEの西村さんが語っていたのは「日本のインディーズ・アーティストはまず、Spotifyで1日8000再生を目指せばいいのではないか」ということ。Spotifyにはトップ50というプレイリスト、つまりランキングがあります。そこにランクインするために必要なのが約8000回らしいのです。極端な話ですが、ファンが1000人いたら1日8回聞いてもらえばいいわけで、なんとかならない数字ではないのではないか、と。

日本ではSTの普及が遅れていることもあって、トップ50に入るための1日の再生回数が世界に比べて多くありません。本当にやるかどうかはさておき、数字やプラットフォームの特性に着目し、マーケティング戦略を考えるいい事例だなと感じました。このようなアイディアが、これからの音楽プロモーションには要求されるのでしょう。

 

ストリーミングサービスはまだまだ進化中

最後に「2018年の注目していること」。昨年AppleはSHAZAM(音楽認識アプリの最大手)を買収。AIスピーカにも力を入れていることから、データを収集して活用するところに力を入れてくるのではないか、とのことでした。

 

他方でSpotifyはブロックチェーンの会社を買収しています。音楽は権利関係処理が大変で、その処理にブロックチェーン技術の活用が期待されているのです。Spotifyはここに力をいれてくるんじゃないかとのことです。そういえばSpotifyは2018年にIPOすると観測されています。もしかしたら資本市場も見方につけて、成長を加速させるのかもしれません。

さて、以上レポートをお送りしてきました(私見もたくさん入りましたが)。人工知能、スマホ、ストリーミング、AIスピーカーなどが相まって、音楽業界はどんどん変革しています。動きが早すぎて目を離すとすぐに置いてかれてしまいます。だからこそ面白い分野でもあるので、引き続きウォッチしていきます。(イベントや取材など何かあったら連絡ください。返事するかわかりませんが笑)

AUTHOR
納富 隼平(Notomi Jumpei)
合同会社pilot boat CEO
1987年生まれ。2009年明治大学経営学部卒、2011年早稲田大学大学院会計研究科修了。在学中公認会計士試験合格。大手監査法人を経て、トーマツベンチャーサポート株式会社に参画し、ベンチャー支援に従事。毎週開催ピッチイベントMorning Pitchをはじめ、300超のピッチ・ベンチャーイベントをプロデュース。2017年に独立して合同会社pilot boatを設立し、引き続きベンチャー支援に従事する。現在もBtoCベンチャープレゼンイベント「sprout」、ベンチャーHow to紹介イベント「faces」を主催する。得意分野はFashionTechをはじめとするライフスタイル系BtoCサービス。「pilot boat」「pilot boat cast」を運営。
twitter: @jumpei_notomi