不動産特化のエクイティクラウドファンディングを取り扱うクラウドリアルティ。ちょっと難しそうですが、根っこの部分はとてもエモーショナル。重要なのはストーリーと語る鬼頭社長に、サービスや創業の想いを伺いました。
取材日:2017年08月24日
街づくり×不動産×クラウドファンディング
クラウドリアルティは、「不動産の証券化とエクイティクラウドファンディングを組み合わせた、FinTechサービス」です。みなさん今こう思いましたよね?
うわ、なんか難しそう
でも「みんながお金を出し合って、建物をリノベーションしたり街づくりをしたりするサービスです。」って言われたらちょっと興味出てきませんか?
ところで、この記事を執筆してるとき、ちょうどこんなニュースが流れてきました。
「1日2.2軒も「京町家」が消失、このまま京都の街並みは失われるのか」
京都の町家が7年間で5,600軒も消失したそうで、京都市が保全に動いているという内容です。ちょうど今回は、このような問題に取り組み、京町家を保全するようなお話。クラウドリアルティの鬼頭さんにお話を伺いました。
2005年3月 東京大学工学部建築学科卒業
2007年3月 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了
建築構造設計の研究を行う傍ら、Grove International Partners及び傘下のファンドにてオフィス・商業施設・ホテル・スキー場等の様々な不動産のアクイジション及びアセット・マネジメントに携わる
2007年4月 Boston Consulting Group入社
住宅メーカーの本社部門組織・事業再編及び営業力強化、部品メーカーのサプライチェーンマネージメント、食品メーカの本社組織設計、制御機器メーカーの事業ポートフォリオ監査、情報通信企業の新規事業立案などに携わる
2010年6月 メリルリンチ日本証券株式会社入社
投資銀行部門にて不動産業を中心とした事業会社及びJ-REITのIPO・公募増資の主幹事業務、不動産の開発証券化に関するアドバイザリー業務など多数の案件を執行
2014年12月 株式会社クラウドリアルティ設立 代表取締役就任
クラウドファンディングで、京町家をリノベーション
さて改めて、クラウドリアルティが取り組んでいるのは「不動産特化のエクイティクラウドファンディング」。インタビューさせていただいた前日、京町家のプロジェクトが無事に成立しました。京町家の案件は前回に続いて2回目の成立。
参考:“P2P型の不動産クラウドファンディング”「Crowd Realty」が国内1号案件で満額成立
京都の町家は老朽化していることもあって、遊休不動産となっているものも多いそう。他方、京都はインバウンド観光で盛り上がっている地域でもあります。もったいないので、リノベーションして宿泊施設にしよう、と町家の宿泊施設としての運営を行っている方が考えたのが、今回のプロジェクトのきっかけだそうです。
リノベーションをするには、どうしても多額の資金が必要になります。銀行借入れや他の方法が一般的かと思いますが、老朽化のため町家の担保価値は高くありません。そこで今回選ばれた手法がクラウドリアルティが提供する「不動産のクラウドファンディング」だったというわけです。つまり、「この町家をリノベーションさせる」というプロジェクトを一般の方々に公開して、投資をしたい方に投資をしていただく、という手法です。(通常のクラウドファンディングと一緒ですね!)
満を持して公開した本プロジェクトは即日で満額成立。3200万円が数時間で集まったそうです。
ストーリーに共感してもらうことが大事
クラウドリアルティが運用するプロジェクトも当然投資ですので、利回りですとか投資期間ですとか「どのくらいでどの程度リターンがあるのか」といったことは重要です。しかし、それと同じくらい大事なのはストーリーだと鬼頭さんは語ります。
不動産とはいえクラウドファンディングなので、ストーリーが大事になってきます。今回の町家だったら、街づくりや歴史、観光だったりということが大切ですね。
また、クラウドファンディングという、個人が投資する形態だと(投資は法人としても可能です)、取れるリスクが変わってくると言います。
銀行が取れないリスクを個人に転嫁しているわけではないんです。京都のことは京都の方がわかりますし、宿泊・観光のことはプロのほうがわかりますよね。つまり、個人のほうがリスクをしっかり見極められる場合もあるんです。クラウドファンディングという形態が多様な人の投資を可能にして、そこから生まれる多様性によって全体のリスクを判断できるようにしているんです。
不動産特化のエクイティクラウドファンディングは、グローバルにみてもそんなに多くなく、まだまだこれから伸びていく分野だそうです。クラウドリアルティは既にエストニアで事業を始めていたりと、グローバルな案件もこれから増やしていくそうです。
また、今回の町家のケースのように、遊休不動産や街づくり関連の話は、既存のスキームだとお金が集まりにくいという側面もあります。そこをクラウドファンディングの仕組みで解決すべく、今後も、街づくりに関連する案件などには積極的に関わっていくとのことです。
ストーリーとファイナンスを組み合わせる
話題を変えて、鬼頭さんはなぜ、不動産特化のエクイティクラウドファンディングをはじめたのでしょうか。
学生時代は建築を専攻していて、構造設計事務所と不動産ファンドでも働いていました。設計事務所だとストーリーやコンセプトという話はするけどお金のことはなかなか話さない。逆にファンドではリスク・リターンということに話が終始してしまう。両方を取り入れることはうまくできないのか、とずっと考えていたんです。
大学院を修了後、鬼頭さんはボストンコンサルティンググループ、メリルリンチに所属。個人のお金をうまく使うことと、ファンドを組み合わせたらいいんじゃないかいう考えに行き着いて、クラウドリアルティを創業しました。
また、日本企業がファイナンスしようとしたとき、既存のキャピタルマーケットでは海外からの資金調達は簡単ではなく、資金を集めるのは非常に大変です。この現状を新しいテクノロジーをうまく使って、トラディショナルなマーケットを塗り替えることに挑戦していきたい、というのも創業のきっかけだそうです。
外資にいたときよりも海外との接点が多い
クラウドリアルティはインタビュー時点で約10名の方が働いているそう。オフィスはシェアオフィスに入居していたり、イベントスペースがあることもあり、外の方との交流も多いそうです。会社は自由な雰囲気で「自分に制限を作らなければ何でもできる」環境。例えば、エストニアに子会社があったり、タイで仕事をしたり、鬼頭さんが昔外資系の企業にいたころより海外とのやりとりは多くなったそうです。
今後について、不動産特化クラウドファンディングというのは新しいサービスですし、マーケットポテンシャルがあります。短期的には案件をどんどん組成していくと思いますが、最後に、中長期の展望について伺いました。
クラウドリアルティを創業した背景には、日本のキャピタルマーケットをもっと強くしたいという思いがあります。日本企業がもっと簡単に、グローバルオファリングをできる世界を作っていきたいと思います。
ストーリーをもった不動産のクラウドファンディング。これから拡大が予想される分野です。クラウドリアルティはこれからも活躍の幅を広げてくださることを期待しています!
インタビュー内容はpodcastでも配信しています
podcastでインタビュー内容を配信しています。テキストより情報が詰まっています。興味がわいた方は是非こちらも聞いてみて下さい。
納富 隼平(Notomi Jumpei)
合同会社pilot boat CEO
1987年生まれ。2009年明治大学経営学部卒、2011年早稲田大学大学院会計研究科修了。在学中公認会計士試験合格。大手監査法人を経て、トーマツベンチャーサポート株式会社に参画し、ベンチャー支援に従事。毎週開催ピッチイベントMorning Pitchをはじめ、300超のピッチ・ベンチャーイベントをプロデュース。2017年に独立して合同会社pilot boatを設立し、引き続きベンチャー支援に従事する。現在もBtoCベンチャープレゼンイベント「sprout」、ベンチャーHow to紹介イベント「faces」を主催する。得意分野はFashionTechをはじめとするライフスタイル系BtoCサービス。「pilot boatのブログ」「pilot boat cast」を運営。