Checked in Japanで世界展開。ラグジュアリーブランドの委託販売プラットフォーム「RECLO」

CtoCの面倒を解決する

近年のCtoCの隆盛は語るまでもないが、中にはCtoCに向かないシチュエーションもある。たとえば高額品だ。もしかしたら偽物かもしれないし、かといって素人が写真や文章だけで本物かどうかを見破るのは容易ではない。写真撮影から購入希望者とのコミュニケーションや発送までを、忙しい社会人が高頻度でやるのは大変だ。高齢者はスマホを使うのがそもそも大変かもしれない。

そんなCtoCの不便を解決しようとしているのが、アクティブソナー社が運営するRECLO。CtoBtoCを採用したリユースアイテムの委託販売だ。代表取締役社長の青木氏に、RECLOのことを伺った。

株式会社アクティブソナー 代表取締役社長 青木 康時 (Aoki Koji)

1977年生まれ、岐阜県出身。愛知大学経営学部卒業後、20代前半に芸能活動を経て、2004年2月に同志と共に携帯電話・通信機器の営業会社を立ち上げ、5年で年商50億円に育てる。2008年9月にウォーターサーバー事業を行うウォーターダイレクト入社。営業部長として3年で年商30億円に導く。2010年4月には同じくウォーターサーバー事業のファインスプリングスを設立。創業2年でグループ年商40億円に。2012年11月にイーコマース事業を行うアクティブソナーを設立。代表取締役社長に就任し、ラグジュアリーブランドの委託販売サービス「RECLO(リクロ)」の運営を開始した。

 

ブランドアイテムを委託販売&買取

RECLO(リクロ)はアパレルアイテムやバッグ、宝飾品や時計などを委託販売できる、ラグジュアリーブランド流通プラットフォームだ。サービス名は”ReCloset”を意味している。

現在RECLOでは百貨店にあるようなハイブランドを筆頭に、約1000のブランドを取り扱っている。RECLOが買い取った商品はRECLO.jp(サイトの名称も「RECLO」だが、サービスとしてのRECLOとサイトとしてのRECLOを区別するために、サイトは「RECLO.jp」と表記する)か、後述する他社の提携サイトで販売される。

そもそもなぜアクティブソナーはRECLOという事業を手掛けたのだろうか。それは青木氏の体験によるものだった。

元々は別の事業を営んでいたのですが、2014年ころに新規事業を考えていたんです。ちょうどフリルやメルカリなどのフリマアプリなどが勃興してきた時期でした。そこでとあるフリマアプリを試しに使って、ブランド品を買ってみたんです。

届いてみたら高い買い物なのに新聞紙でぐるぐるになって送られてきてがっかりしましたし、それどころかそのアイテムは偽物だったのです。

プラットフォーム側にも相談したのですが、CtoCなので個人間で解決してほしい、と。たしかに法律上はそれで問題ないのでしょうが、個人としてはやはりモヤモヤしてしまいますよね。これはこれでいいのだろうけど、他にも解決して欲しい点が一人のユーザーとしてありました。そこでそれらの面倒を解決してくれるサービスを作ろうと思ったのです。(青木氏、以下同)

 

高額品が偽物だったことに加えて、10代の女の子と仕事中にコミュニケーションしたり、時間や手間がかかることも厳しいと感じた。「ユーザーとして自分が没頭できる気がしなかった」のだ。「少なくとも自分が没頭できるサービスを作りたい」と思っていた青木氏が考えついたのがRECLOだった。真贋判定やコミュニケーションなどのユーザーが面倒と感じることはすべて代行する、コンシェルジュ型のwebリユースサービスだ。

 

「RECLOは既存業者の2倍の値段で買い取ってくれる」
C2Cでブラックボックスが透明化

通常のCtoCでは「撮影」「値付け」「出品」「問い合わせ対応」「梱包」「配送」「レビュー」など、自分でやらなければならない作業は意外と多いし、これを商品ごとに対応しなくてはならない。

他方でRECLOのビジネスモデルはCtoBtoCの委託販売モデル(買取りも可能)だ。引取りをお願いすると家まで荷物を回収してくれるので、商品を渡すだけで出品手続きは終了だ。鑑定や値付け、撮影、出品、販売、配送などの手間はすべてRECLO側が代行してくれる。コンシェルジュ型の手離れがいいサービスだ。もちろん手間がかかる分、CtoCのサービスよりは手数料が高くなる。

フリマアプリとRECLOの違い(credit by アクティブソナー)

 

とはいえこの手数料も、オフラインで買い取ってもらうことを考えれば高くないようだ。そもそも自分のアイテムを買い取ってもらうという仕組みは、昔から質屋やリサイクルショップなどがある。しかしRECLOでの買取り価格はそれらを上回るのだ。

今までは質屋などで買い取ってもらっても、それがいくらで販売されるかはわかりませんでしたし、その情報の非対称性が彼らの飯の種でもあったわけです。しかしCtoCの登場によって、ブラックボックスが見える化されました。なので我々は買取・販売価格などボックスの中身を丁寧に説明し、お客様に納得していただいた上での取引を心がけているのです。

さてRECLOは既存のC2Cとバッティングするような事業にも思えるが、そうではないらしい。ユーザ層が異なるのだ。

前述のようにCtoCのサービスは、何から何まで自分でやらなくてはならない。自分の商品を魅力的にするためのビジネス・マーケティング的なセンスがあったほうがいいし、時間的な余裕も必要だろう。つまり擬似的なショップ店員のような体験を楽しめることが重要なのだ。

他方でRECLOのユーザーは、CtoCサービスと比較するともっと年齢層が高かったり、ある程度裕福で売りたいものはあるが仕事で忙しいといった方が多い。それゆえに家事代行などの時短サービスを利用していることもあるようだ。こういう方は自分で何から何までやる時間もインセンティブも薄く、むしろ委託販売で何から何までやってくれたほうが助かる。

オープンイノベーション・スキームで、さまざまな業界にRECLOネットワークを導入

RECLOのビジネスの特徴には、国内外でさまざまな会社と提携しながら事業展開を進めていることも挙げられる。アクティブソナー曰く「オープンイノベーション・スキーム」だ。

RECLOはアパレル・それ以外のプレイヤーとの提携にも積極的(credit by アクティブソナー)

 

たとえばRECLOを運営するアクティブソナー社は、三越伊勢丹グループと資本業務提携をしている。この狙いは三越伊勢丹の顧客のリピートを促すことだ。いったんRECLOが顧客からアイテムを買取ると顧客はそれを原資にして、新しい商品を三越伊勢丹で買うというわけだ。このスキームがうまく回ればRECLOは当然取引につながるし、三越伊勢丹も新しい商品を買ってもらえる。三越伊勢丹とRECLOの顧客層は近しいこともあり、両社の思惑が一致したのだ。

また業務提携だけでなく、投資もセットになっていることが重要だったそう。

もちろん投資がなくてもこのスキームは実行できるはずです。ただ現実的な問題として、レガシーな百貨店がわれわれのようなスタートアップに事業推進して欲しいと言われても、プライドもありますし部署横断的な取組みが難しい事は、前職時に痛感していたんです。でもグループで投資をしていただき、全社的な意向としての親戚関係になる事によって、各部門的にも程良い忖度が働くようになっていくと思っていました。

アクティブソナー代表取締役社長の青木氏

 

また百貨店というアパレル産業だけでなく、RECLOは他業種との提携も進めている。たとえばセブン&アイ・ホールディングスとの取組みだ。同社はコンビニやそごう・西武といった百貨店と同時にominiモールというオンラインモールをもっており、そこにRECLOが出店するという形式だ。あくまでセブン&アイのリユースサービスとして展開し、ここでRECLOが不要なアイテムをユーザから買い取って、nanacoなどのポイントに還元する。そうするとnanaco店舗の売上げにつながるのだ。もともとセブン&アイのサイトに来ているくらいだから、顧客はセブン&アイに愛着がある。顧客はセブン&アイのサービスとして中古品を買い取ってもらえるしnanacoのポイントも溜まる。つまりRECLOは裏方にまわり、いわば中古事業をOEMとして提供しているのだ。

リユースアイテムの出品ってもともと面倒じゃないですか。箱に詰めてロードサイドのお店まで持っていて、しかも数百円にしかならない。だからついでに出品するくらいがちょうどいいんですよね。なので三越伊勢丹に行かれる方はついでに三越伊勢丹で売る、セブン&アイを使っている方はセブン&アイでついでに売る、というほうが楽なんです。

もちろん長期的にRECLO.jpのブランディングはしていますが、場面によってはRECLOが裏方になったほうがいいケースもあります。そういう場合は欲張らずに表側は提携先、裏側の仕組みはRECLOが担当する、というようなスキームで取り組んでいます。

今後もRECLOは自身の経済圏を広めるべく、小売りやEC、ポイントをもっている会社などとの連携を進めていく予定だ。今まではファッション関連の企業との提携も多かったが、今後はたとえば不動産会社と提携し、引っ越しなどのモノが動くタイミングなどでの買取りなども進めていくことも計画している。

 

「Checked in Japanは信頼性が高い」
グローバルにビジネスを展開

さてここまで、ユーザーが販売する=RECLOが買い取るケースを中心に話を展開してきたが、RECLOが販売する=ユーザが購入するケースはどのようになっているのだろうか。

RECLO.jpでももちろん販売していますし、RECLOが構築した国内外18チャネル・200カ国でも販売しています。とくにハイブランドはグローバルな商材なので世界中どこでも販売しやすいんです。逆に派手目な商品は日本より中国のほうが買われやすい、といった傾向もわかってきています。こういうデータを利用しているところも従来の古物商とは違うところですね。

RECLOはアジアを中心に世界各地のECと提携している。モールの出店者となっていることもあるし、ECによっては特設コーナーが作られてRECLOの商品が掲載されることもあるらしい。これはひとえに日本の「鑑定能力の高さ」に起因する。先述したようにCto(Bto)Cではハイブランドの偽物商品が交じることもあるが、日本で鑑定される「Checked in Japan」の商品はそれが極端に少なく信頼性が高くなるからだ。

 

最後に今後のRECLOの展開について伺った。

今は買い取れない着物や家具など、カテゴリーを増やすことはもちろん検討しています。なんでも買いとれますよ、のほうがユーザ体験はいいですからね。

そしてデータ活用です。色々な方と提携して商品を買い取ったり販売したりすることによって、いろいろなマーケティングデータが集まってきました。たとえば「白い靴を販売した方はまた白い靴を買う」ということがわかっています。だったら適切なタイミングで白い靴のメルマガを届けたら効果があがりますよね。データで未来の価値をつくっていこうと思います。

長期的には、グローバル展開です。RECLOのクローンモデルが世界中にあって、中国で買ってロシアで売る、のようなことができたらいいですよね。モノを介して感謝を作り出せたらされたら、すごいキレイだと思うんです。

CtoBtoCのビジネスモデルからラグジュアリーブランドをReClosetしようとする「RECLO」。自分のアイテム販売をまるっとお任せしたいユーザはもちろん、会員行動を活性化させたい企業などは、ぜひともRECLOの今後の動きに注目してほしい。

 

会社名:株式会社アクティブソナー
代表者:青木 康時

所在地:東京
資本金:175,000,000円
設立日:2012年11月
URL    :https://reclo.jp/

 

インタビュー内容はpodcastでも配信しています。

 

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AUTHOR
納富 隼平(Notomi Jumpei)
合同会社pilot boat 代表社員CEO / ライター
1987年生まれ。2009年明治大学経営学部卒、2011年早稲田大学大学院会計研究科修了。在学中公認会計士試験合格。大手監査法人で会計監査に携わった後、デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社に参画。毎週開催ピッチイベントMorning Pitchをはじめ、300超のピッチ・ベンチャーイベントをプロデュース。
2017年に独立して合同会社pilot boatを設立し、引き続きベンチャー支援に従事する。スタートアップ紹介メディア「pilot boat」、podcast「pilot boat cast」、toCベンチャープレゼンイベント「sprout」を運営。得意分野はFashionTechをはじめとするライフスタイル・カルチャー系toCサービス。
2017年よりASCII STARTUPでBtoCベンチャーのコラムを連載中。日本スタートアップ支援協会顧問。
twitter: @jumpei_notomi