個別防災リスク診断、大雨・洪水リスク分析等が登壇|防災テックスタートアップカンファレンスのSUピッチレポート

 

防災テクノロジーの未来を語るイベント「防災テックスタートアップカンファレンス 2024」が2024年10月25日にオンラインで開催された。主催は下記にも登場する防災テックスタートアップの株式会社Spectee。本カンファレンスの中では、防災テックサービスを展開するスタートアップがピッチを実施した。本稿では編集部が注目した3社を紹介する。

SNSや人工衛星、交通情報から災害情報を可視化

最初に登壇したのは、本カンファレンスの主催であるSpecteeだ。

Our World in Data によれば、世界の自然災害は1960年頃から急増している。Specteeの推計によれば、2022年には3,000億ドル(約45兆円)の経済損失が発生しているそうだ。

(イベントの画面キャプチャから)

そんな中同社が提供しているのが、リアルタイム防災・危機管理サービス「Spectee Pro」だ。世界で発生する災害の情報を、SNSや気象、交通、道路・河川カメラ、人工衛星といったデータから迅速に収集し、リアルタイムで被害を可視化して、その後の展開を予測する。「発生から1分での被害可視化」がコンセプトだ。

Spectee Proは災害対応や危機管理などを目的として自治体や報道機関、小売り、インフラ、金融、メーカー、物流、商社など幅広い業界で導入が進んでいる。2024年6月現在では1,100超の会社が利用しているという。

またSpecteeはサプライチェーン・リスク管理サービス「Spectee Supply Chain Resilience」も提供。これは製造業を中心に利用するプロダクトで、サプライヤー周辺で起こる危機を瞬時に察知し、被害状況や製品への影響、納期の遅れなどの迅速な把握を可能とする。

 

リスクやハザードマップから防災リスクをパーソナライズ診断

株式会社KOKUAが提供するのはパーソナル防災サービス「pasobo」だ。

KOKUAは2020年から防災カタログギフト「LIFEGIFT」を提供している。同サービスによって防災を始めるきっかけにはなるものの「その後にどういった防災対策をしたり、防災グッズを揃えたりしていいかわからない」という声が少なからずあったそう。実際に国内では、今後災害は増加していると思っていても、その内具体的な対策をしているのは半分程度だとか。

(KOKUAのプレスリリースから引用

そこで同社が提供を開始したのが、防災におけるパーソナライズリスク診断サービス「pasobo」だ。Web上で14程度の質問に回答して住所情報を共有すると、ユーザー毎にパーソナライズライズされた情報、即ち、世帯環境における災害リスクや全国のハザードマップから見た立地リスク、避難所情報などが提供される。また当該ユーザーに必要な防災対策や避難情報、防災グッズも自動診断してレコメンドする。どのような防災グッズや避難対策が必要かは、専門家や被災者の声を元に設計した。

またpasoboで使えるポイント連携を進めたり、天気予報専門メディア「tenki.jp」と連携したパーソナル防災コンテンツの提供、マンションに導入することで防災意識の向上を図ったりといった企業間連携も進めている。pasoboを広く提供していくことで「災害対策として何をしたらいいかわからない」といった人をなくしていく算段だ。

 

洪水・台風・大雨情報を分析・予測

気候変動による大雨・洪水リスクの分析や予測するシステムを開発するのは株式会社Gaia Vision。同社は東京大学水産技術研究所の技術と知見をベースに気候変動適応や自然災害対策を実施するために設立された、気候学・水文学を専門とする大学発スタートアップだ。代表の北氏も同大学で特任研究員を務めている。シミュレーションと科学的知見をベースとした、独自データの信頼性が強みだ。

同社のコア技術は以下の3つだ。

・東京大学発のグローバル洪水シミュレーション技術
・リアルタイム大規模気象データ処理技術
・気候·気象·水文学の横断的な知見とデータ基盤

このコア技術を活かし、以下の2つのプロダクトを開発・提供している。

(Climate Visionのプレスリリースから引用

まずは気候変動・洪水リスク分析プラットフォーム「Climate Vision」だ。世界中の洪水リスクを即座に、簡単に、わかりやすく表示する。洪水だけでなく、台風や大雨や猛暑、熱波の情報といった情報も提供可能だ。ピッチ時点で上場企業12社に採択されている。

他方の「Water Vision」はリアルタイム洪水予報ソリューション。国内の1. 5日先の洪水範囲・深水深の予測が可能となっている。なお、同サービスは東大とJAXAで共同研究の成果で、ピッチ時点ではβ版を提供している。

 

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近年の地震や猛暑、水害等、気候変動が原因とみられる災害は後を絶たない。対策は待ったなしだ。そのためにはテクノロジーの活躍も必要だろう。防災テックスタートアップの発展と登場による災害対策に引き続き期待したい。

(執筆:pilot boat 納富 隼平)