今回紹介するグリーンコンチネンタルは、植物の問題をIoTの力で解決するスタートアップ。植物×IoTで何ができるのか、なぜサービス開発にいたったのか、環境に最適な植物だけを発注できるアプリとは何なのか、根掘り葉掘り(植物だけに)伺いました。(インタビュー日:2017年09月13日)
IoTで環境にあった植物を探し、育てる
植物のある暮らし。おしゃれですね。おしゃれなだけでなく、部屋やオフィスに植物を置くと人間にとって色々な効能があることもわかっています。例えば、オフィスに人が多すぎるとCO2濃度が高くなり、眠くなってしまって生産性が落ちるという問題があります。窓がない部屋もありますし、高層階だと窓が開けられないこともありますね。こんなときはオフィスに植物を置いてCO2濃度を調整すれば眠気を防止できます。
また、視界に一定量の緑があるとリラックス効果があったり、時差ボケや不眠、対人ストレスにも緑や植物が有効という研究結果もあります。このように、オフィスや仕事場に植物があるということは、単なる癒やし以上の効果があるようです。
でも植物って、自宅やオフィスで育てるの大変ですよね。お店では綺麗に咲いていた花がすぐ枯れてしまう、水をどれくらいあげればいいのかわからない、そもそもどんな植物を選べばいいのかわからない…
今回紹介するグリーンコンチネンタルは、そのような問題をIoTの力で解決するスタートアップです。
植物の状態を知るためのIoTを、大学と共同開発
グリーンコンチネンタルが扱うのは、インテリアなどに使用する観葉植物と、植物の状態を知るためのIoT。
観葉に限らず植物全般は、照度(光)、水分(湿度)、CO2濃度など変数が多く、しかも植物によって扱いが異なります。素人が扱うにはちょっと難しそう。
従来も植物の状態は計測されてきましたが、その測定方法は間接的なものだったと、グリーンコンチネンタル社長の中村さんは語ります。今までの方法は照度・湿度などの環境を測定し、そこから植物の状態を推測していたそうです。
グリーンコンチネンタル株式会社 代表取締役 中村 壮博
1981年大阪府出身。ピアノ調律師の父とソプラノ歌手の母の間に生まれ、ピアノの下で育てられる。クラブDJとして学費を稼ぐ一方、同志社大学在学中に外資系コンピュータ会社の学生インターンとして、新規事業の立ち上げに従事し、テクノロジーの素晴らしさに出会う。2004年に豊田通商株式会社に新卒入社。生活産業資材本部にてシニアビジネス領域のありとあらゆる新規事業を担当。世界初のセンサー付紙おむつ(大失敗w)や、デザイン介護用品の開発、トヨタ自動車向け介護ロボット開発支援や、中国(上海・瀋陽・成都)での合弁会社立ち上げ責任者を経て、2012年5月グリーンコンチネンタル株式会社を設立。土、花、植物とは、中国駐在中に運命的に出会ってしまい、以来、造形美と機能美の魅力の虜に。世界中の種子標本や、土壌サンプル収集が個人的な趣味。
グリーンコンチネンタルは植物の状態を計測できるIoTを埼玉大学と共同開発。植物の状態を直接的に計測することで、より正確な情報が入手できるようになりました。
植物は通常光合成をしており、体内で気泡がはじけているんですね。それを超音波で分析すれば、植物が疲労しているのかなどの分析ができます。これをIoT化して植物の育成に役立てているんです。環境から植物の状態を推測するのでなく、直接植物の状態を調べられるようにしたのがグリーンコンチネンタルのIoTです。(中村さん、以下同)
インテリアショップや美容室にも導入
グリーンコンチネンタルはIoTを作っているだけではなく、ショップに植物を卸したり、オフィスの内装をしたりと植物そのものも取り扱っています。それにIoTを組み合わせているわけですね。
例えば美容室。顧客は美容室で1-2時間という長い時間滞在しなければならず、しかもじっとしていなければなりません。仕方のないこととはいえ、美容室は本来リラックスするための空間。ストレスを受けるような事態は避けたいところです。そこでリラックス効果を狙って植物を導入しようとする美容室も多いそう。ところが美容室は、薬剤やネイル、ドライヤーの熱など植物にとって良くない条件がそろっているのです。
そこでグリーンコンチネンタルのIoTの出番です。IoTが植物の状態を把握することで、植物が活動したいときに水分を与える、といったことが可能となるのです。IoTで植物を定常的に観察することで、常にいい環境を保持できるのです。
他にもインテリアショップやクリニック、トレーニングジムなど、植物や緑が必要なあらゆるところから、グリーンコンチネンタルに引き合いが来ているそうです。
環境に合った植物「だけ」を発注するためのアプリを開発
グリーンコンチネンタルは植物発注用のアプリも作っているそう。IoTと連動し、環境に合った植物だけを発注できるといったものです。
IoTがCO2濃度や照度などを測定しているので、その環境に合った植物しか選べないようになっています。例えば、あるインテリアショップでは売り物の観葉植物を仕入れるために使われています。そのショップの照度が低いとしますよね。そうすると光が必要な植物は仕入れられない、といった仕組みになっているんです。
植物を育てる農家さんの環境は、照度も十分で自動水やり機もあるような完璧な環境。でも、インテリアショップやユーザの自宅はそうではありません。なので、せっかく買っていただいた植物がすぐに枯れてしまう、といったことがおきてしまうのです。そこでグリーンコンチネンタルは今回のアプリを開発し、それぞれの環境に合わない植物が行き渡らないような仕組みをつくったというわけです。
2017年09月現在はBtoBのみの展開ですが、将来的には各家庭にIoTセンサーを配布し、ご自宅の環境に合った植物を誰もが発注できるようにしていきたいとのことです。自宅にピッタリの植物がわかる未来。楽しみです。
土の販売がきっかけで植物IoTを開発するように
グリーンコンチネンタルは最初から植物のIoTを開発していたわけではなく、そのルーツは土の販売だったそうです。
元々私は商社に勤めていまして、海外のとある仕事で、現金ではなくて土地で代金が支払われるということがあったのです。土地をもっていてもしょうがないのでなんとか現金化しようとするわけですが、この土が植物の生産に非常に向いていることがわかったのです。
現在日本では植物を育てるのに山の土を使ったり腐葉土を使ったりしているそうですが、栄養素が少なかったりアンモニアが発生してしまったりと、植物にとって最適の土ではないそう。
中村さんが譲り受けた土は植物を育てるのに最適な土だったそうで、ここから植物を育てはじめたことが現在のビジネスの基礎となっています。
最初は農家の一角を借りて植物を育て始めたグリーンコンチネンタル。このときの経験がIoTを開発する契機になったそうです。というのも、最初は少人数で植物を育てていたので、たくさんの植物を少人数で管理しなければならなかったのです。農家にwifiを契約していただいたり、中村さんが自作で簡単なセンサーを作って植物につけたり、生産を効率化するためにあらゆることをしていたそうです。
これが功を奏し、植物を生産するためのノウハウが会社に溜まっていき、満を持してショップや商業施設に植物を納品。ところが、植物はすぐに枯れてしまったそうです。
考えてみれば当然なのですが、生産時は光や温度など、なにもかも完璧な状況で植物を育てているんです。しかし普通のショップでは、自動水やり機はないしエアコンだってあたるし、太陽はあたらない。植物を育てる環境が全く違ったんです。
そこで中村さんが思いったのが、自社が生産のために使っていたIoTをショップでも使うこと。光や温度を測るシステムを外部の方でも使えるようにしたのです。こうしてグリーンコンチネンタルは植物IoTを開発する会社へと進化していきました。
オフィス、美容室、ジム、病院…あらゆる場所に植物を
さて、植物といえば心配になるのが虫。グリーンコンチネンタルの植物は病院やクリニックでも導入が進んでいるらしいのですが、虫の対策はどうしているのでしょうか。
海外から植物を輸入する際には、感染症や外来種が入り込まないように、念入りに消毒が施されます。グリーンコンチネンタルの「ドクターグリーン」という商品は、ほとんどオーガニックなものだけで、輸入植物に準じたレベルの消毒をしています。加えて、虫が嫌がるハーブなどの植物も組み合わせています。
これだけでも十分そうですが、ここにもIoTを使用しているそう。虫が発生すると、植物は特定の反応をするそうで、IoTでその反応をすぐさまキャッチし、万が一虫が発生しそうになれば、すぐに対処が可能な仕組みとなっているそうです。
病院の例もそうですが、IoTをうまく使うことで、美容室、ジム、インテリアショップなどありとあらゆる場所に植物を置けるようになってきました。植物のことだったらどんな相談にも乗れると思います。是非ご連絡ください。
働きたい方も募集しています。植物が好きな方はもちろん、アート、建物空間、インテリアが好きな方も是非門を叩いてみてください。
大阪発、植物×IoTという珍しい分野を手がけるグリーンコンチネンタル。しかしその需要は確実にあります。ぜひこれからも成長していただき、各家庭に最適な植物が行き渡る未来をつくっていただきたいです!
The contents of the interview are also distributed by podcast
podcastでインタビュー内容を配信しています。テキストより情報が詰まっていますので、興味がわいた方は是非こちらも聞いてみて下さい。
納富 隼平(Notomi Jumpei)
合同会社pilot boat CEO
1987年生まれ。2009年明治大学経営学部卒、2011年早稲田大学大学院会計研究科修了。在学中公認会計士試験合格。大手監査法人を経て、トーマツベンチャーサポート株式会社に参画し、ベンチャー支援に従事。毎週開催ピッチイベントMorning Pitchをはじめ、300超のピッチ・ベンチャーイベントをプロデュース。2017年に独立して合同会社pilot boatを設立し、引き続きベンチャー支援に従事する。現在もBtoCベンチャープレゼンイベント「sprout」、ベンチャーHow to紹介イベント「faces」を主催する。得意分野はFashionTechをはじめとするライフスタイル系BtoCサービス。「pilot boatのブログ」「pilot boat cast」を運営。