FemTechの6ジャンルと代表的スタートアップ
FemTech(フェムテック)はFemale+Technologyの造語。別名Women’s HealthTechとも言われており、女性の健康ニーズに取り組む幅広いテクノロジーの総称です。
ここではFemTechを6個のジャンルに分け、それぞれ主なプレイヤー(海外・日本)を紹介します。
※ 海外企業の累計調達額はcrunchbaseから。情報は2019年06月時点。日本円換算は1ドル=110円、1ユーロ=120円で計算。
※ 社名とサービス名が異なる場合は「社名/サービス名」で並列。
1) 月経(月経アイテム・月経トラッキング)
衛生用品の開発・販売、月経周期を把握するためのトラッキングデバイス開発などが該当します。
衛生用品の場合は既存市場のものよりも若者に人気の出やすいおしゃれでシンプルなデザインにしたもので、ビジネスモデルとしてはサブスクリプション形式をとることが多い印象があります。
月経周期のトラッキングはアプリのみとデバイス付きの2種類に大きく分かれています。アプリのみのサービスは参入障壁が比較的低く、ユーザーも手軽に始めやすいという特徴があります。他方でデバイス付きのアプリは、基礎体温測定の正確性の高さや作業の煩雑さを軽減できると言った利点があるとして、注目されています。
(日)エムティーアイ / ルナルナ
生理日管理ができるアプリ「ルナルナ」を運営。生理予定日・排卵日予測から体や心の状態を知ることができます。インストール数は1200万超。
(米)LOLA
オーガニック生理用タンポンのサブスクリプションサービス。生理痛時のビタミン剤やコンドームなどのセクシャル用商品なども展開しています。
累計調達額:$35.2M (約38億7200万円)
(米)Rael
オーガニック生理用タンポンのサブスクリプションサービス。生理用下着や整理中の肌荒れ用の化粧品など関連商品も手がけています。
累計調達額:$20.3M (約22億3300万円)
(ドイツ・アメリカ)Clue App / Clue
生理と排卵のトラッキングアプリ。フェムテックという言葉を作ったアイダ・ティン(Ida Tin)氏が運営しています。
累計調達額:$29.7M (約32億6700万円)
2) 妊娠・子育てケア(妊娠トラッキング、避妊、妊活、卵子凍結、不妊治療、授乳)
出産前後の女性を手助けする製品・サービスなどです。簡易血液検査などの不妊治療に直接関わるものから、出産後のポータブル搾乳機、母乳の自宅へのデリバリーサービスなどこのジャンルに入るものは多岐に渡ります。
特に不妊治療は高額で、金銭的、身体的、精神的な負担も大きく、そうした負担を軽減するニーズは高まっています。不妊治療の支援や育児に関する相談サービスなどは、従業員の福利厚生として企業が取り入れているケースも増えてきました。
育児に関しては、不安が多く正しい情報を得られる相談先が少ないというニーズがあり、その課題を解決するためのサービスが登場しています。
(日)ファミワン/famione
ユーザーがスマホ上で入力したチェックシートの内容を妊活の専門家チームが分析し、妊活を適切に進めるためのアドバイス・サポートを行う。
累計調達額:不明
(米)Kind Body
ポップアップ形式のクリニックで妊娠ができるかの簡易診断を実施。中核事業は卵子凍結。
累計調達額:$21.3M (約2億4300万円)
(米)Sera Prognostics
血液検査による早産や合併症のリスク診断。
累計調達額:$114.3M (約125億7300万円)
(米)LIA
トイレに流せる妊娠検査テープ。バイオ分解し、水にも溶ける特殊な素材の紙を使用。
累計調達額:$2.6M (約2億8600万円)
(米)willow
ボトルやコードなどがない、持ち運び可能でハンズフリーな母乳搾乳機を開発。仕事中などでも時間をとることなく搾乳できる。
累計調達:$42.5M (約46億7500万円)
(米)Prelude Fertility
全米に渡り多くのクリニックと提携しており、卵子凍結、人工授精、卵子寄付など幅広いサービスを行えるネットワークを持っています。様々な悩みやニーズを包括的に応えるところも特徴です。
累計調達額:$200M (約220億万円)
3) 更年期や出産による身体の変化(更年期症状の改善、骨盤内蔵)
更年期症状や、出産による身体の変化をケアするサービス・商品群です。特に子宮、膀胱、直腸などを支える骨盤を覆う骨盤底筋が弱くなることをケアするサービスが多いようです。更年期症状に対応するサービスは現時点では少ないものの、この市場は歴史的にサービスが少なく、その意味で注目されています。
(英)Elvie
骨盤底筋の体操をモニタリングできるスマートデバイスとアプリの開発・販売。骨盤底筋のトレーニングにより失禁を防ぐことなどを目的としています。なお同社は搾乳機の開発・販売もしています。
累計調達額:$53.8M (約59億1800万円)
(英)KaNDy Therapeutics
更年期にみられる血管運動における症状を治療する薬を開発。ホットフラッシュや夜間に目覚めてしまうという課題を解決しようとしています。
累計調達金額:£25M (約30億円)
4) メディカル(遠隔医療、女性に多いガン検査・治療)
忙しさや「産婦人科やレディースクリニックに行くことが恥ずかしい」という思いから、なかなか医師にかかれない人は多いようです。そうした点を解決すべく、遠隔でより簡単に医師に相談できるようなサービスが生まれています。
女性特有のガンなど病気の治療や早期発見の観点から検査を簡易化するためのデバイス、検査・治療薬の開発が進められている分野です。
(日)アナムネ
女性医師にオンライン医療相談ができるサービス。チャットベースでのやり取りで場所や時間を問わないやり取りが利点。出産・育児などの相談に安心して相談できる。
累計調達額:不明
(米)Antiva Biosciences
HPV感染によって引き起こされた疾患の治療法を開発している。現在臨床実験段階。
累計調達額:$56.3M (約61億9300万円)
(米)iSonoHealth/ATUSA
複雑な操作なしで乳がんの病変を発見することができるAIを使ったポータブル3D超音波スキャナーの開発。クリニック向けに販売。
調達額:$120K (約1320万円)
5) セクシャルヘルス(ナイトアイテム、性感染症対策)
月経については話すのが恥ずかしいといった理由から、医師に月経痛や避妊方法について聞きに行くのはハードルが高いと感じる人が多いようです。しかしネットで処方が受けられれば、そうした悩みは簡単に解消される可能性があります。
また、緊急避妊用ピルもネットを使ってオンデマンドで処方を受けられれば利便性は非常に高くなるでしょう。
この分野には性感染症検査キットのネット注文なども該当し、顔を見せなくていいという心理的障壁の低さが女性のニーズを満たす可能性があります。
ナイトアイテムもオーガニックの潤滑剤やデザイン・機能性の高いプレジャーアイテムなど、一方的な男性視点ではなく女性が利用することを中心に据えて開発されたものが増えている印象です。
(日)アレのスマルナ
スマホを通じて医師の診療を受けられ、ピルの処方が受けられるサービス。生理やピルについて薬剤師にLINE@で無料相談できる窓口も設けている
(米)NURX
低用量ピル、緊急避妊用ピル、HPV検査キットなどをオンデマンドでネット注文できるサービス。
累計調達額:$41.4M (約45億5400万円)
6) ファッション(下着・靴等)
ブラジャー、ハイヒールなど女性が身に付けるもので不便さを感じている人は少なくありません。窮屈なものを身に付けると気分が悪くなるほか、健康を害することもあります。まさしく女性の健康課題。そうした女性の課題に取り組むのがこの分野のスタートアップです。
(米)THINX
月経を吸収できる下着を開発販売する。ナプキンやタンポンの代用品として使える。下着以外にもレオタードなどのアクティブウェアにも商品群を広げている。
累計調達額:不明
(日)BELLE MACARON/ashlyn
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