美容師が自分を奪い合う。リクポが描くユーザーファーストな予約の未来

美容室の予約がわずらわしいと思ったことはないだろうか。予約サイトから地域を選択して候補の美容室を探し、値段やメニューを比較して予約の電話をする。都合があわなければ日程をずらしたりほかのお店を検索する、というプロセスだ。

美容室は全国に約24万件(2017年、厚生労働省「衛生行政報告例」)あり、コンビニが約5万件であることを考えれば、いかに美容室が多いかがわかる。美容室は新規開業に際しての新規投資が比較的小さいく、新規参入が容易。店舗数は年々増えており、過当競争で、集客に困っている美容室も多いだろう。美容室の予約はInstagramなどのSNSを使った集客もあるものの、全体としては予約サイトからの集客に頼らざるを得ない状況だが、予約サイトは手数料が高いと頭を抱える美容室も少なくない。

現在の美容室予約は、ユーザにも美容室側にも完璧ではない。そんな問題意識から美容室予約の体験を変えようとしているのが、requpo(リクポ)だ。代表取締役社長の木崎氏に話を伺った。  

 

株式会社リクポ
代表取締役社長
木崎 智之(Kizaki Tomoyuki)

大学3年で学生起業。2015年12月に4社目の創業となる株式会社リクポを設立、2016年7月に日本初の”検索がいらない”サロン予約アプリ「requpo(リクポ)」を正式ローンチ。2016年12月には8000万円の資金調達と特許取得により話題となり、Twitterトレンド4位に。2017年9月、乃木坂46(当時)の伊藤万理華さんを起用したコラボCMを開始。YouTubeの急上昇ランク14位、30万回再生を記録。2018年1月、toC向けピッチイベント「sprout」で最優秀賞と企業賞をダブル受賞。2018年夏、2億3000万円の調達を行い、累計調達金額は3億6000万円超に。2018年11月、世界初のコレクション型SNS「selmee(セルミー)」をローンチ。

 

リクポは「ユーザファーストな」美容室予約

リクポは「自分が主役の”わがまま予約”」をキーフレーズに据える、日本初の”検索がいらない”予約アプリだ。リクポのアプリを開いたら、メニューや予算、おねだり(トリートメントをつけてほしい、カラーだけど前髪もカットしてほしい等)を入力する。必要なら今の自分の髪型となりたい髪型の画像を添付して、あとは美容師からのアプローチを待つだけ。気に入った提案があったらマッチングし、あとは美容師のところに指定した日時に行けばいい。場所などにもよるが、たとえば表参道エリアなら5分で3人ほどの美容師からアプローチがある。

(image: リクポ)

 

前もって相談しておいて、それを叶えてくれる美容師だけが自分に連絡をくれる。言わばリクポは「美容師が自分を奪い合う仕組み」になっているのだ。なおこの仕組みはビジネスモデル特許(P6037590)も取得済みだ。リクポは2019年1現在、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、福岡エリアを中心に利用できる。  

従来の美容室予約サイトだと、エリアなどで検索、店舗情報をみて、メニューや値段を確認、カレンダーから日付を選び(場合によっては電話する)、来店する。当然ながらカレンダーは美容師側が空いている日程のみが提示され、ユーザがそれに合わせている。また検索に引っかかろうとして、最寄駅が恵比寿駅にも関わらず「渋谷駅から徒歩30分」のような表示をして、ユーザに有益でない検索結果が表示されてしまうこともある。

従来の美容室予約の仕組みは、「美容室側の都合にユーザが合わせる」というもので、ユーザファーストではないな、と思っていました。自分の都合に合わせてくれるのが真のユーザファーストですよね。 しかもリクポの仕組みだと、美容師さんが自分を奪い合ってくれます。SNSでの投稿にいいね!やコメントをもらえたら嬉しいように、リクエストをして美容師さんからリアクションをもらえる体験によって、予約を”作業からエンタテインメント”にしているんです。(木崎氏、以下同様)

  ちなみにリクポで一回ある美容室に行ったからといって、DMがくることはない。自分がリクエストをしない限り美容師側から連絡がこないことも「ユーザファースト」の観点から、徹底しているポイントだそうだ。  

 

急な予約にも対応可能

リクポのユーザは女性が約8割(2割が男性というのは、木崎氏にとっても「予想より多い」そう)。18-24歳がもっとも多く、25-34歳が次ぐ。木崎氏によるとある調査では、女性の7割は行きつけの美容室がなく、毎回美容室を変えているそうだ。そのため美容室を検索するという行為には、かなりの女性が不満を抱えている可能性がある。 美容室に行くにあたっては、前もって予定しておく人が多いものの、突然予定が空いて急に美容室に行きたくなったり、朝起きたら美容室に行きたくなる、なんていう方も多いそうだ。既存の美容室の仕組みだと、当日に予約をしようとすると、web予約では間に合わないので電話で対応しなければならないことも多いし、電話しても他の予約でいっぱいなら、別の美容室を探さなくてはならない。しかし、リクポなら「今日の19時から予約したい」とリクエストを出せば、その要件にあてはまる美容室から回答がくる。ユーザからすれば利便性は高いだろう。

 

 

空いた1時間の隙間を埋められる

リクポの仕組みは美容師にとっても有益だ。既存の予約サイトから予約を受け入れると、当日に客が来るまでどんな髪型にしたいのか、カラーリングをするのか、ひいてはどのくらい時間がかかるのか、ということがわからなかった。しかし、リクポなら事前にリクエストを受け取っているので、そのような情報は事前に把握することが可能となる。実際webからの予約を受け付けてスケジュールを埋めていると、この1時間だけ隙間が出てしまう、ということが多々あるそう。そんなときはリクポのユーザに「この内容でいかがですか?」と提案して隙間時間を埋めればいい。 また美容師にも「ボブが得意」「ショートは苦手」というように、得意・不得意分野がある。リクポでは「こういう髪型にしたい」といったリクエストを見分ければ、自分の得意なスタイルの客だけを選ぶといったことも可能だ。

 

リクポの収益は、美容師ひとりあたり月額1980円のシステム利用料に加えて、ユーザと美容師がマッチングしたときに成功報酬として一律500円の手数料をとるという仕組み(※2019年1月現在、キャンペーン中で使用料、送客料ともに無料とのこと)だ。

マッチング手数料を支払い金額に対する一定割合にせず一律500円にしているのも、ユーザファーストな仕組みをつくる一貫です。割合にしたら美容師さんがいちいちいくらなのか考えなければいけなくなってしまいます。それだと手数料を気にしてユーザへのベストな提案ができなかったり、手数料のことを考えて提案スピードが遅くなってしまう可能性があります。ユーザからすればベストな提案がすぐにくるのがいちばん大事。一律500円なら美容師さんは手数料のことを考えずに、気に入ったリクエストをどんどん受けることができます。
business model of requpo

リクポのビジネスモデル(pilot boat作成)

 

「美容室予約」から「予約」のプラットフォームへ

ここまでリクポを「美容室の予約サービス」として紹介してきたが、木崎氏は「リクポは美容だけのサービスではない」と語る。すなわち、リクポの予約サービスの仕組みの他業種への横展開だ。

自分の過去の経験や捉えやすさもあって美容室から始めましたが、リクポはあくまで「予約を革新していくサービス」と考えています。飲食や宿泊など、予約が必要なあらゆるジャンルで「自分が主役の”わがまま予約”」を展開していきたいと考えています。ユーザの「わがまま」をどんどん叶えていきたいですね。

  飲食などへの横展開もあるが、縦への展開としてはEC展開といった可能性もある。たとえば「美容室で髪を染める」という行為には、「染めた髪を長持ちさせたい」というニーズもついてくる。そのときに「髪を染めたので長持ちさせたい」という「わがまま」に対して、専用のシャンプーを提示する、というようなことが考えられるだろう。  

 

自撮りが売れるSNS「セルミー」

また、リクポ社は新サービス「自撮りが売れるSNS『selmee(セルミー)』を2018年11月にリリースしている。これは自撮り動画や写真を売買できるSNSだ。

selmee(セルミー) – 世界初のコレクション型SNS

 

YouTuberやInstagramerに代表されるインフルエンサーの知名度が上がってきたが、当然その下にはインフルエンサーになりきれていない、「マイクロインフルエンサー」が相当数存在する。インフルエンサーになったらマネタイズはできるようになるものの、そこまで至っていないマイクロインフルエンサーは、マネタイズの手段が必然的にすくなってしまう。かといってマイクロインフルエンサーの投稿に価値がないかと言われると、決してそんなことはない。 セルミーを使ってマイクロインフルエンサーが画像や動画を投稿。それをファンらが購入することで、マネタイズになる、というわけだ。ファンらもマイクロインフルエンサーの応援ができるし、クローズドなコンテンツをコレクションできるというわけだ。たとえばデビューしたてのアイドルや、インフルエンサーほどフォロー数が多くないインスタグラマーなどの利用を想定しているとのこと。こちらもぜひチェックしてほしい。

 

会社名:株式会社リクポ
代表者:代表取締役CEO 木崎 智之
所在地:東京
設立日:2015年12月
URL    :https://requpo.jp/
※情報は記事公開時点のものです。

 

インタビュー内容はpodcastでも配信しています

podcastで取材時のインタビューを配信しています。

AUTHOR
ぺーたろー / 納富 隼平(Notomi Jumpei)
合同会社pilot boat 代表社員CEO
1987年生まれ。明治大学経営学部卒、早稲田大学大学院会計研究科修了。在学中公認会計士試験合格。大手監査法人で会計監査に携わった後、ベンチャー支援会社に参画し、300超のピッチ・イベントをプロデュース。 2017年に独立して合同会社pilot boatを設立し、引き続きベンチャー支援に従事。長文でスタートアップを紹介する自社メディア「pilot boat」、toCベンチャープレゼンイベント「sprout」、その他スタートアップイベントを運営。得意分野はファッション・ビューティ×テクノロジーをはじめとするライフスタイル・カルチャー系toCサービス。各種メディアでスタートアップやイノベーション関連のライター、大企業向けオープンイノベーション・コンサルティングも務める。
Twitter: @jumpei_notomi
PHOTOGRAPH
森田大翔(TAISHO) 写真家/映像作家
【写真】 雑誌やWeb広告など、人物を中心に撮影。イベント撮影や企業様の採用写真(Wantedlyなど)も多く撮影。
【映像】 企業様を対象にしたドキュメンタリー映像やメイキング映像が多く、ドローンを使用した撮影も可能。(CM撮影など)
【受賞歴】 “The new generation digital photo contest 2013” 最優秀賞受賞
 
 

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