プチ社食「オフィスおかん」で、働くヒトのライフスタイルを豊かに

「働くヒトのライフスタイルを豊かにする」をミッションに掲げ、100円で食べられるお惣菜をオフィスに用意するオフィスおかん。企業のエンプロイーサクセスに貢献する理由、おかんを作る経緯となった自身の体験について、社長の沢木さんにお話を伺いました。

 

「わお!」と言われるお惣菜がオフィスで食べられる

置き惣菜、プチ社食、惣菜版オフィスグリコ。今回紹介する「オフィスおかん」は色んな名前で親しまれています。ハンバーグや切り干し大根、煮物など、真空包装のお惣菜が入った冷蔵庫をオフィスに設置。従業員は1個100〜200円を支払えばお惣菜を食べられる、というサービスです。

 


株式会社おかん 代表取締役CEO 沢木 恵太(Sawaki Keita)

1985年長野県生まれ、中央大学卒。フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業にて新規事業開発、ベンチャー企業でゲームプロデューサー兼事業責任者を経て、EdTech領域のスタートアップに初期メンバーとして参画。その後、2012年12月に株式会社おかんを設立し現職。「働くヒトのライフスタイルを豊かにする」をミッションに、簡易設置型社食サービス「オフィスおかん」を2014年3月より運営。

 

お惣菜そのものにもこだわりが。日本では食品添加物が約1500種類程あるそうですが、オフィスおかんの添加物は約30種類。本当に必要なものだけに絞り、かつなるべく国産の食材を使い、ヘルシーで安心な惣菜作りを手がけています。

オフィスに設置された冷蔵庫には常時20種類程度の惣菜が入っており、旬の食材を選んだりして毎月1/3程度の惣菜が入れ替わります。決済は現金での支払いも可能ですが、スマホアプリ経由での支払いも可能だそう。

いくら僕らが「おいしいですよ」って言っても、やっぱりパックのお惣菜ですからレトルト感があったり、魚がぱさぱさするんじゃないかと、最初は期待されていないみたいです。でも我々のお惣菜はこだわり抜いた商品です。社内では「わお!」と呼んでいるのですが、とにかくお客様においしい!と驚いて頂くことが多いですね。これだけでも勝負できるくらい、おいしさにはこだわっています。やはり食べ物は美味しくないと使い続けていただけないですから。(沢木さん、以下同)

 

オフィスおかんの冷蔵庫には常時20種類ほどのお惣菜が入っている。

 

オフィスおかんという名前の通り、冷蔵庫が設置してあるのはオフィスなどの職場が多いようです。他には商業施設やカラオケのバックヤード、工事現場、病院やクリニック、お寺でお坊さんが食べてるなんてこともあるそうで、働いている方がいればどこでも置いているそう。規模は10名弱から数千人の一部上場希望まで、業界も様々。高層ビルの上層だと下まで降りるのも一苦労なので、おかんのお惣菜で食事を済ませる、なんていう方も多いようです。

 

働き方改革の一歩としてオフィスおかんを導入

お惣菜を食べる方から100円をいただく他に、オフィスおかんは企業からサービス・システム利用料金を頂いています。従業員数、利用頻度、予算などに応じてプランが用意されているそうです。もちろん福利厚生の面もあると思いますが、企業がオフィスおかんを導入する理由はどのようなものでしょうか?

いわゆる「エンプロイーサクセス」です。コミュニケーションの活性化や休職からの復帰率の向上、健康診断の改善など福利厚生の側面から企業の魅力を高め、離職率を軽減したり採用強化につなげようと意図しているお客様が多いです。

 

2017年7月の有効求人倍率は約1.5倍。どの業界も企業も人集めや採用にはとても苦労しているようです。そこで必要になってくるのが、働きやすい環境を作って、競合よりも魅力を高めていくこと。

昨今、働き方改革や健康経営などが話題になることも多いですが、ハードルを低く取り組めることは多くなく、最初の一歩としてオフィスおかんを使ってみよう、という企業が多いようです。

実際にオフィスおかんを導入した企業からは、気軽に惣菜を食べられるようになった、持ち帰って晩御飯にしている、休憩室で食べるので同僚とコミュニケーションをとるようになった、などの声があがっており、効果を実感している企業が多いそう。

 

これでは仕事が楽しくても働き続けられない

おかんのミッションは「働くヒトのライフスタイルを豊かにする」。

おかんのミッションと行動指針。「おかん」っぽい言葉使いだ。

 

オフィスおかんを導入する理由はエンプロイーサクセスのため、というお話もありましたが、何をもってエンプロイーサクセスというかは難しいところです。仕事そのものが絶好調でもプライベートを犠牲にしていてはしょうがないですし、働き方やバランスもヒトによって異なります。子育てや介護なども社会問題化してきていますね。

おかんがこのような社会課題に取り組むことになった背景は、沢木さんの経験にあったそう。

私は新卒でとあるコンサルティング会社に勤めていました。非常にやりがいはあったし楽しかったのですが、コンサルティングというのは非常にハードワークな仕事です。私も当時はまともに食事を摂っていなかったですし、健康診断の結果もひどいものでした。このままではいくら楽しくても働き続けられないな、と感じたんです。そこで働きと健康を両立できるようなシステムを作ることにしました。

 

世はちょうど働き改革や健康経営など、働き方に対して目を向けている時期。マクロ的なトレンドにも乗ることができて最初からオフィスおかんの引き合いは多かったそうです。

オフィスおかんのような取り組みはベンチャー企業やIT企業などの導入が多いと思って、当初はそのような企業をターゲティングしていました。しかし、フタを明けてみたら業種も様々だし、老舗企業にも使って頂いています。色んな会社が従業員のために何かしたいと思っていることがわかりました。

 

ところで、近年健康経営だったり働き方だったりが注目されていますし、従業員の健康を考えたほうがいいような気はしますが、それによってすぐに業績が上がるわけでもありません。オフィスおかんだけでなく、企業がエンプロイーサクセスのための施策を実行するためにインセンティブは何かあるのでしょうか。

確かに、健康経営には売上や利益に直結するような指標がなく、それが動機づけを弱くしています。将来的にはそのような指標もつくっていくことも目標の一つです。

 

おかんのオフィスには導入企業の写真が掲載されている

 

ライフスタイルに合わせた働き方を、おかん自ら実践

「働くヒトのライフスタイルを豊かにする」をミッションに掲げるおかん。しかし、当のおかんで働いている方のライフスタイルが豊かでなければ医者の不養生。そういうこともあってか、おかんで働くメンバーは、他のベンチャー企業とちょっと属性の異なる方が多い印象があります。

まず目立つのは女性の多さ。ベンチャー企業というとわりとガッツリ働いたり最先端なことに取り組むことが多いため、男性割合が高いことが多いのですが、おかんは7〜8割ほどが女性だそう。

おかんではミッションへの共感度が非常に重要で、採用時もそれを意識しています。結果的に、結婚や出産、社会復職などでライフステージが変わる女性が多くなっています。

 

お子さんのいる方も多いそうで、保育園に合わせて出退勤したり、子供が病気なので在宅ワークをしたりなど、働き方も非常に柔軟。

例えば子供の夏休み期間の働き方もユニークです。いつもは学校に行っているから仕事ができる平日も、子供が夏休みだとそうもいきません。そこで在宅勤務や休暇を使ってフレキシブルに働いているそうです。

 

また、おかんは働き方やどんな社員がいるのかを積極的に発信している印象があります。

僕たちは尖ったことをしていると自負があります。発信していることで興味がある方に伝わってほしいのはもちろん、他の企業の事例になればいいなと思います。それらが積み重なって「働くヒトのライフスタイルを豊かにする」というミッションの達成につながりますしね。

エンプロイーサクセスのハブになる

「働くヒトのライフスタイルを豊かにする」ため、お惣菜からエンプロイーサクセスを達成しようとしているおかん。今後はどのような展開を考えているのでしょうか。

「オフィスおかん」は手段のひとつでしかありません。働く方の健康問題を解決するために、クロスセルかもしれないしアドオンかもしれないし、次のチャレンジを企画しているところです。

 

お惣菜をオフィスに置くビジネス、と聞くと一見競合優位性がなさそうに聞こえます。しかし実際には健康的なお惣菜を作るのは大変だし、サプライチェーンの構築も大変です。在庫情報やその他のデータ収集もどんどん進めているところとのこと。また、お客様のオフィスに実際に行ってモノを設置する仕事というのはそんなに多くありません。意外に優位性がいっぱいあるようです。

今後の展開の基軸は「エンプロイーサクセスのハブになる」こと。働き方には自信の健康に加えて、家族の健康も関係してきます。他のプレイヤーと協力することも視野に入れ、例えば育児や介護、を解決できるようなサービスもアドオンしたり、健康診断とリンクも考えていきたいとのことでした。

 

 

The contents of the interview are also distributed by podcast

podcastでインタビュー内容を配信しています。テキストより情報が詰まっていますので、興味がわいた方は是非こちらも聞いてみて下さい。

AUTHOR
納富 隼平(Notomi Jumpei)
合同会社pilot boat CEO
1987年生まれ。2009年明治大学経営学部卒、2011年早稲田大学大学院会計研究科修了。在学中公認会計士試験合格。大手監査法人を経て、トーマツベンチャーサポート株式会社に参画し、ベンチャー支援に従事。毎週開催ピッチイベントMorning Pitchをはじめ、300超のピッチ・ベンチャーイベントをプロデュース。2017年に独立して合同会社pilot boatを設立し、引き続きベンチャー支援に従事する。現在もBtoCベンチャープレゼンイベント「sprout」、ベンチャーHow to紹介イベント「faces」を主催する。得意分野はFashionTechをはじめとするライフスタイル系BtoCサービス。「pilot boatのブログ」「pilot boat cast」を運営。